本当のフォントの話
ほぼ毎週金曜日の深夜に放送している、「タモリ倶楽部」で最近取り上げられたのがフォントに就いての話で、なかなか面白かったので見てしまいました。フォントとは、広辞苑を見ると「同一書体で同一の大きさの大文字・小文字・数字など、欧文活字の一揃い。また、文字の字体・デザインのこと」とあります。例えば、日本語で言えば、明朝体、楷書体、ゴシック体、欧文でいえば、Times New Roman、Courier体などを言います。現在使用されているフォントは、通常に使うものでも100種類、その他、特注を含むとその数は1,000種類以上もあるとのことです。番組の中では、公団ゴシック(日本高速道路公団用に開発したフォントで、高速道路の看板などに使用され、視認性にすぐれたもの)やジュース缶の後ろの説明文に使用されているイワタUDフォントなどの紹介がされていました。興味深かったのがフォントの中には幽霊文字と呼ばれ、絶対使われない文字が含まれているということです。それは、「妛(読みは”シ”)、彁(カ)、暃(ヒ)、挧(ウ)、閠(ギョク)、蟐(ジョウ)、槞(ロウ)」という漢字です。本当にこんな漢字があるのか、パソコンのフォントリストから拾ってみると、確かに全て載っていました(ちゃんとこのブログで表示されているということはリストにあるからですが、もし、表示されていなければ、お持ちのパソコンにそのフォントがないということです)。一見、見たことがあるような気もする文字もありますが、絶対見たことがないはず漢字で、また今後も見ることはない漢字です。なぜこんな漢字が入っているのかというとどうもこのリストを作った昔の人が間違って入れてしまった漢字だそうです。現実には使われない漢字もフォントリストには入っているということが驚きです。それでもフォントメーカーはこれらの漢字もわざわざ作らなくてはいけないそうです。早くリストから外せばいいのにと思うのですが。それから、フォントを作る場合には、「東、永、国、室、道、機、識、闘、愛、警、鷹、酬」の12の漢字をまず手書きで作るそうです。なぜかというとこの12文字の中にほぼ漢字で使用する全ての線が含まれているからです。よく、日本のお習字で”永”という文字を始めに書かされることがあります。そしてこの文字にお習字に使用する主な筆遣いの要素がだいたい含まれているというようなことを書道の先生から、大昔、聞いたことがあります。日本語の場合、一つのフォントには15,000~20,000文字のフォントを作らねばならないそうです。そして昔の活字に比べてだんだん増加しています。その理由はパソコンが使われるようになったため、昔はほとんど使用されなかった漢字が使われ始めたからだそうです。漢字削減の流れに対し、OA化が逆行しているというわけです。当然アラビア文字でもフォントの種類はたくさんあります。わがアラビア書道ではだいたい、ナスヒー、ルクア、ディーワーニ、ジャリー・ディーワーニ、ナスタアリーク、スルス、クーフィの7種類ぐらいしか扱いませんが、その他、時たま、マグレブ、イジャージー、クルディーなどを見かけることもあります。ところが、[図説]アラビア文字事典(ガブリエル・マンデル・ハーン著)を見ると、31書体も紹介されています。アルファベット28文字しかないアラビア文字の場合では、フォント作りも日本に比べはるかに簡単なので、非常に多くのバリエーションがあることと思います。