埋められない穴――『BANANA FISH』と20年
私の心には、埋められない穴がある。心の一部が欠けてるといってもいい。正直いい方は何でもいい。心の裏側の見えなさそうなところに虚空が口をひらいていて、そこに手をつっこむと、何もない。すかっすかって素通りするだけ。そうだよ、BANANA FISHとアッシュが10代前半のわたしに開けていった穴だよ。今回のアニメ化のニュースで一番驚いたのは、「ああ、まだそこに穴あったんだ」て自覚したこと。もう、ないのかと思ってた。私が初めて読んだのは、10代前半だったんですが、あまりに衝撃が大きすぎて、その後ほとんど通して読み返した記憶はありません。怖くて。私はさして強い心をもってないので、絶対受けとめきれないの分かってた。最終巻読んだ後茫然として、番外編が出てるの知って読んで、救われるかと思いきや全く救われなかった。でも今回約20年ぶりにアニメ化でBANANA FISHにふれて、当時の記憶がぶわーっと蘇ってきて、まだそこに穴があること、20年という年月もその間の私の人生もそれを埋めることはなかったということが分かりました。時間は癒してくれなかったようだ。いやもう分かってる。光の庭を読んだ時に、分かってる。吉田先生は人間というものが分かってて、光の庭で描かれたのはリアルなその後だった。何も、誰も穴は埋めてくれない。BANANA FISHとアッシュにあけられた穴は、BANANA FISHとアッシュにしか埋められない。でも埋められることはたぶん万に一つもないから、これからもこの穴とともに生きていく。30超えた私はそれが少しうれしくもある。そして、今回のアニメ化のニュースで一番うれしかったことは、名だたる漫画家さん方のファンアートが見られたこと!!!!もうすごい、めちゃくちゃ似てるのから、先生独特のタッチで描かれたのまで、お宝の山!Twitterでいいねしまくってるので、よろしければ一括でご覧ください!!後悔させないよ!!@iceasahi でやってます。今思えば、私の強くてきれいな人好きは絶対にアッシュからきてる。本当に好きだった。その一心でニューヨークまで行けたくらい。BANANA FISHに10代前半で出会ってなかったら、二十歳前後で渡米はできなかったと思う。私は片田舎のさして頭も良くない平凡な子どもで、周りに海外の大学出てる人なんていなかったし、海外勤務の親戚なんてのもいなかった。でも、どうしても行きたくなっちゃったんだよね。英文の勉強もしたかったけど、何よりあの街に住みたかった。そのためなら何でもできた。勉強でも何でも。TOEFLっていう小難しい英語の試験があるんですが、田舎では受験できなかったので、大阪まで受けにいってました。でも1回や2回でいい点出るはずもなく(ほんとにおつむ普通だったんで)、結局両手に満たないくらい受けたかなぁ。最後から2番目に受けた試験の結果がすれすれで、滑り込みました。ほんとにすれすれで、担当の先生には「行けないと思ってくれ」って言われてた。けど、そのころから無駄に強気な性格で、なんか行ける気がするって思ってた。思い出した。頭のいい子は1回でパスしてた。よく諦めなかったよね。私にあったのは、諦めの悪さだけだったな。先生のところに通って、「行きたい」って言い続けてた。だったら点出せよと思われてたと思うけど、今、今勉強してるんです! っていう。そんなすぐすぐ成果出ないのよ。1回で覚えられるタイプじゃないから。この経験もあって、私は語学だけは努力でひっくり返せる科目と思ってます。小学生から習ってなくても、帰国子女じゃなくても、いけます。いける。でも、いざ行けるとなったら、母親に東海岸はダメと言われたりね。いや、意味ないから、私にとってはニューヨークの大学じゃなきゃ意味ないのよ!!母親は、今でもですが、思い込むとそれに固執するところがあります。西海岸はいいけど、東海岸はだめって散々言われた。もうどうやって説得したか覚えてないけど、どうにか説得しました。学費は公費だけど、生活費は私費で、ニューヨークで生活するだけの蓄えは私にはなかったので、親を説得するしかなかった。これが人生で初めての反抗らしい反抗でした。うちは過保護の過干渉だったので、高校も大学も、母親の意向に沿って決めてた。でも、これだけは譲れなかったんですよね。最後まで背中を押してくれたのは、ゼミの教授でした。私は今でもほんとにこの教授に感謝してる。言われた言葉が全て迷った時に背中を押してくれる。正直言うと、私はセンター試験で点が出なくて、本命諦めてこの大学に通ってたんですが、ニューヨークへの道があったことと、この教授に出会えたことだけでも、ここにしてよかったと思ってます。お金がなくて、パンと水で生活することになっても、行けっていう先生だった。日本人の女の子なら、行ってしまえばパンと水ってことはないですけどね。たぶん誰かがおごってくれる。日本ではあまりないけど、お店の人がよくおごってくれました。片隅で勉強してると、併設のカフェの店員さんがコーヒーおごってくれたり。私そんなアジアンビューティーとかではないので、かわいいかわいくないではなく、優しさの問題かな。施しというか。いかにもお金なさそうだったんでしょう。下心でもなかったですよ。ちょっとこっち来な、みたいなのもなかったので。そんな全ての経験を私にさせてくれたのがBANANA FISHでした。人生変えた。と思う。今から思えば。そして私はもう1回ニューヨークに住みたいと、最近思い始めました。いつ叶うかなー最後はやっぱりこれかな。万感こみ上げた場所。New York Public Library。当時はまだ聖地巡礼みたいな言葉もなかったけど、行くよね。美と知と生の場所でした。漫画、マンガ、まんが、コミック書評、レビュー今日の読書日記BLラブにほんブログ村