「オニババ化する女たち~女性の身体性を取り戻す~」 三砂ちづる著
いろんな意味で大変面白い本でした。マネーの経済学を読んでる途中でしたが、思わず題名に引かれて買ってしまい読み始めたのですが、本当に、いままで誰もいえなかった女性の身体性について、見事に明快に書いてくれていて、思わず一気に読んでしまいました。セックスから結婚、出産といった女性の身体性を取り戻すこと、あるいは女性の性を一生に一度はちゃんと考えてみようということですね。それなしに、仕事仕事と生きることにいったいどんな意味があるのかという問いです。リプロダクトヘルス(女性の保健)を中心とする疫学が専門の三砂さんのフィールドワークは同じ女性として大変興味深くまた共感できるものであります。ある部分ではかなり過激な事も発言していますから女性からの反発もあるかもしれませんが、彼女の発言の根拠というか、体験や経験し研究していることは、私にとっては非常になじみの深い世界がベースになっているので、とてもすんなりと入ってきてます。ぜひ多くの女性の方々に読んでいただきたい本ですね。現在のジェンダーのない労働力として中性化した男女関係ということに、イバン・イリイチあるいはもう少しさかのぼってDH・ロレンスなどが早くから警鐘を鳴らしていました。今、また、日本からこのようにはっきりと言いにくい事をスパット言ってくれる女性が現れてとっても嬉しいですね。しかも、いい意味で非常に肩の力が抜けた読みやすい文章です。女性の生き方は今や自由となり、経済力さえあれば、自分で選択し子供を産むのも産まないということも、自分で決められるようになってきたけど、逆にある意味、女性として生きるということが、とっても出来にくくなってしまっているようです。その原因として、今の60代70代の女性達くらいから始まっている女性自身が女性としての性を否定せざる得なかったこと、またその時代背景を考察しています。そして現在の女性達は、女性の身体性をすっぽり忘れてしまって、やはり男性を中心とした価値観のなかで、女性性を否定する生き方を選んでしまっているのではないかという提言と私には読めました。イリイチが言わんとしたバナキュラーなジェンダーということの意味、男と女、女性の体、男女の性をもう一度考え直してみるために大変よい題材となる本です。また、日本女性の性について、その文化の奥深さにも触れています。惜しむらくは結婚制度について、もう少し深く掘り下げていただきたかったなと思うところです。しかし、本当に、あっという間に読んでしまった久々のヒット作でした!一度はお読みになって、女性の性を考察するお時間をお創りくださいませね。今日は新札発行の記念にお金のお話と思ったのですが、この本のインパクトとパワーに圧されて書いてしまいました!笑。DH・ロレンスについてhttp://www.uruyusu.net/chocolate/note/renai_lawrence.htm