ブライアン・ジュベール選手の「Rise」 (2010男子フィギュアスケート世界選手権ショートプログラム)
サフリ・デュオの「Rise」2010 男子フィギュアスケート 世界選手権のブライアン・ジュベール選手ショートプログラムを繰り返し見ては楽しんでいます。ロックコンサートのようでもあり、大好きなスターと一緒に踊っているような盛り上がりがあるのです。フィギュアスケートのショートプログラムは、確実に技を成功させることが要求され、失敗は許されません。その分、緊張感は倍増、失敗を回避するために、無難なジャンプを選ぶのが常套です。しかし、このジュベール選手は「真のスケーターなら、ショートプログラムでも4回転を跳ばなければならない」と言うほど4回転への使命感が強いのです。採点方法が変わり、型にはまった、つまらない演技が増えてくる昨今、果敢に挑戦してこそ、見るに値するいい男というものです。若干沈痛の面持ちのジュベール選手が、氷上でポーズをとると、サフリ・デュオの「Rise」が流れます。緊迫した空気の中、黒い開襟の胸に金のペンダントが光り、ラテン系の妖しい動きから始まります。緊張が最高潮に達したそのとき、一瞬に空気が変わりました。最初の4回転が決まりました。拳を強く握って、喜びを身体全体で表す姿は、当然ジャンプが成功しないと見られないポーズです。体から自然に発する喜びは、私たちと共鳴し、一体となり高揚していきます。ジャンプをしても、ステップしても、スピンをしてもすさまじい歓声と手拍子がおこります。テレビでも会場の熱気が伝わってきます。勢いがあって、軽快で少しコミカルなステップ。かっこよくて愉しい、男っぽい演技です。フェンス越しのコーチの手拍子と掛け声に、拳を差し出して応える場面で、更に会場は盛り上がり、ジュベール選手の力を引き出します。絶好調のジュベール選手のその合図に、コーチは大喜び。選手が演技中にコーチとコミュニケーションをとるのは、見たことがありません。何度見ても、楽しい場面です。演技を終えた瞬間は、自らも会心の出来だったのでしょう。紅潮した顔で雄叫びを上げていました。「これが、ジュベールです!!!」と興奮する解説者。ドラマチックな2分50秒でした。なんて、爽快で魅力的な演技なのでしょう!2010年冬季オリンピック直前に『NHKスペシャル』「ミラクルボディー」という番組を偶然見ました。世界一安定した4回転を飛ぶ選手、ジャンプをするのに理想的な「ミラクルボディー」を持つ選手として特集が組まれていました。彼が番組で「4回転はまるで雲の上を飛んでいるような気分だ」と語ったことがとても印象的でした。滞空時間はわずか0.7秒。技を極めた人間だけが許される境地、ジュベール選手は、その飛ぶ瞬間に確実に「なにか」を掴んでいるのでしょう。五輪ではどんな演技をするのかと楽しみにしていましたが、ショートプログラムで最初に4回転を失敗し、それが尾を引き、見るのも痛ましい結果でした。「すべてを失ってしまった」とコメントしていましたが、それから、わずか1ヵ月後、今回の世界選手権に出場です。五輪の時と同じプログラムだとはとても信じられません。全く別人です。最初の4回転ジャンプの成功によって、「雲の上を飛ぶ」感覚を演技全体に体現し、見る方も、一緒に爽快な躍動感を味わうことができたのです。曲名の通り「Rise」(上昇、高まり)でしたね。今回は総合3位という結果でした。そのコメントは数々の苦難を乗り越えた強さを感じさせます。「満足。 今シーズンは辛かった。失敗が多くて辛かった。 (中略) メダルをとれたのはリベンジではない、良い気分で再出発をきりたかったから。 批判を避けて頭を下げて生きてきた。 批判のせいでやめたいと思ったことはない。 自分を証明したかった。自分がまだ強いことを見せたかった。」ジュベール選手はなんと5回転も可能性があるとか?今度は雲の上を越え宇宙を飛んで私たちを楽しませてくれることでしょう。どん底から這い上がって復活する姿は美しい。そんなジュベール選手に、拍手をおくります。●ブライアン・ジュベール選手のRise (2010男子フィギュアスケート世界選手権 SP) http://www.youtube.com/watch?v=IS_pHQIz6Tk ●ミニ ブライアン・ジュベール選手のRise あんまりかわいいので...http://www.nicovideo.jp/watch/sm9222904