「竹中プランのすべて―金融再生プログラムの真実」木村剛著 アスキーコミュニケーション
先日の木村剛氏の「会計戦略の発想法」に引き続き、「竹中プランのすべて」を今更ながら、読んでみました。一時はマスコミのバッシングで、骨抜き改革と騒がれていた改革ですが、木村剛氏の著書の続きとして、平成14年に掲げた「竹中プラン」がどのようなものだったか、きちんと捉えておこうと思ったのです。その「竹中プラン」、どのような効果をもたらし日本経済に影響していくかは、専門家でもない私が評価できるものではないのですが、この本に書かれている金融庁の有様は、予想を遥かに越える衝撃的なものでした。これほどまで日本は腐敗していたのかと、愕然としました。世界から評価される日本の銀行評価はD,Eレベルとは知っていたものの、世界レベルの銀行評価というものに、日本は全く、及びもつかないという実態。D,Eというのは、日本が経済援助をしていたり、情勢が不安定な国だったり、預金封鎖された国だったりするのですが、その国と同じか、それ以下のランクなのです。日本の銀行が、どうしてそこまで信用を失ってしまったのか、この本を読んで頷けました。海外銀行の厳しいリスク管理から見れば、日本は「危ない国」でしかないそうです。銀行関係者は、もっともらしい大嘘をつきながら、不良債権をここまで放置させた挙句、「不良債権について本当のことを言ってしまうと大変なことになる」と、一生懸命国民の目を逸らすための粉飾決算の正当性まで主張していたそうです。自分の退職金を心配する銀行のお偉いさんの面々、それに追従する官僚の方々でしたが、そこに打ち出されたファイター竹中の改革、国民のための「金融再生プログラム」には、かなり狼狽されたようです。木村剛氏は、日本の銀行のずさんな状況を解りやすく説明しておりまして、会計から見る実態は、とても興味深く、勉強になりました。一部の銀行は、公的資金を受け取る条件として、中小企業向けの貸出し増加を約束したにもかかわらず、貸し渋り貸し剥がしをして、国債などを買って儲けていたというのです。公的資金だけではなく、私たちが銀行に預けたお金は、本来なら、経済の活性化のため企業に貸し出しをされるはずなのですが、ただ同然の金利で集めたお金を運用させて、不良債権の穴埋めにしてたんですね。日本の銀行がオフショアーファンド等を買っているというのは聞いていたのですが、それは、経営上当たり前かと思っていました。しかし、よくよく考えれば、銀行さんの役割は、お金を貸すことなのですよね。健全な経営をしている中小企業でも、それまで受けていた融資の貸し渋り貸し剥がしで、倒産という憂き目にあうわけです。いろいろ試行錯誤しながらこの「竹中プラン」を練りに練ったようですが、もともと、日本の複雑な官僚と銀行の繋がりがなければ、こんなにプランは、まったく不要なものなのです。そして、この竹中プランの結果は先月出たようです。 [東京 5月25日 ロイター] 金融庁の集計によると、大手銀行11行の2005年3月期不良債権比率は2.9%に低下した。 2002年秋、竹中前金融担当相の下で打ち出された「金融再生プログラム」では、2002年3月期の不良債権比率(8.4%)を05年3月期に半減させる目標を掲げていたが、今回これを達成した。同日会見した伊藤金融担当相は、目標達成を「大変意義深く喜ばしいことだ」と評価した。http://www.excite.co.jp/News/economy/20050525195950/JAPAN-177856-1_story.html骨抜き改革と騒いだマスコミ。元金融大臣の発言。そして銀行の言い訳。この方々の名前を記憶しておきましょう。日本の銀行が世界から信用されるようになってもらいたいものです。そして、ファイター竹中さんの今後の活躍を見守っていきたいです。