ヤンキーは、どこにでも(14日の日記)
エッセイストの酒井順子氏は、6月12日の東京新聞読書欄に、「ヤンキー」にまつわる本を3冊紹介している; 「だいたいの 事件はイオンで 起きている」 「地区行事 一枚噛(か)んだら 逃げられない」 「家建てる 前に噂(うわさ)が 流れてる」・・・等々、日本の田舎のそこはかとない可笑(おか)しみと怖さがぎゅっと詰まっている(1)TV Bros.編集部編『イナカ川柳-農作業しなくてよいはウソだった』(文芸春秋1296円)。高齢化、同調圧力の強さ、国道沿いの大規模店舗群・・・といった、「地方創生」的観点からは見えてこないリアリティーが迫ってきます。そして、 「マイルドじゃ なくてただただ どヤンキー」 という川柳が伝えるのは、ヤンキーのリアル。マイルドでないヤンキーも、いる所にはいるのです。 マイルドヤンキーとは、(2)原田曜平『ヤンキー経済』(幻冬舎新書・842円)に詳しい概念。不良性はそれほどではないけれど、地元意識等の保守的傾向が強い若者層を示します。上昇意欲は低め、仲間や家族が大好き・・・といった感じでしょうか。どヤンキーのように大人に抵抗することなく、おとなしくイオンにたむろするという彼らの消費行動を、本書は解きます。 元々は「北部アメリカ人」を示す言葉である「ヤンキー」、日本ではなぜか、昔で言う「ツッパリ」を表す言葉として定着しました。が、今のアメリカでは、日本語で言うところの「ヤンキー」的性質の人がおおいに目立っていて、それがドナルド・トランプ氏です。 (3)町山智浩『トランプがローリングストーンズでやってきた』(文芸春秋・1080円)は、アメリカ在住の著者が、アメリカのさまざまな珍現象、珍人物のことを紹介する書。アメリカの振れ幅の広さを痛感するとともに、アメリカが日本の先行指標だとするならば、「日本もいずれこうなるのか?」と、不穏な気持ちに。 ここではトランプ氏の過激な言動も取り上げられていますが、そんな彼の姿を「ヤンキー」と思って見ると、説明がつく気が。その変わった髪形も、衣服の末端など一部を極端に肥大させることを好むヤンキーのそれと共通していますし、排他的な地元第一主義、極端な言動を好むところも、ヤンキー的ではありませんか。 してみると日本語の「ヤンキー」が示す意味も、実はそう的外れではなかったのかもしれません。「ヤンキー」が大統領になることが現実味を増しているアメリカという国が、世界の中心なのだか世界のイナカなのだか、わからなくなってきました。酒井順子(さかい・じゆんこ) エッセイスト。最近、地元密着型になってきた。・・・ヤンキ-化?2016年6月12日 東京新聞朝刊 8ページ「3冊の本-ヤンキーは、どこにでも」から引用 元々は「北部アメリカ人」を示す言葉であった「ヤンキー」が、なぜか日本では「ツッパリ」を表す言葉として定着し、地元意識と保守的傾向が強い若者を指す言葉となり、現在ではアメリカの大統領候補にも同じ性格を見いだすことが出来るという、中々面白い記事です。