コンドルの系譜 第八話(273) 青年インカ
今、トゥパク・アマルを照らし出すかのように、朝一番の陽光が、朝霧の中を貫いて真っ直ぐに彼の元へと差し込んでくる。それと共に、朝霧を成していた細やかな水の粒子に陽光が煌いて反射し、辺り中が眩い黄金色の光を燦然と放ちはじめた。天空都市マチュピチュ全体が、神聖な黄金色の炎に燃え上がる瞬間である―――。やがて、こちらに歩み来るトゥパク・アマルを、やや離れた場所から護衛していたビルカパサが、丁寧に礼を払って迎える。黄金色に輝く霧の中から、次第に姿を現す主(あるじ)の姿は、燃え上がる清冽な炎に包まれているかのようだ。その姿は、どこか人間離れした、非常に厳粛な気配に満ちている。ビルカパサは、息を詰め、そちらに釘づけられた。「ビルカパサ、待たせてすまぬ。陣営に戻ろう」トゥパク・アマルの声に、ビルカパサはハッと我に返った。「は、はい!!トゥパク・アマル様!!」彼は、冷風を切って歩みゆくトゥパク・アマルの後を、慌てて追っていく。【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪トゥパク・アマル≫反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。≪ビルカパサ≫インカ族の貴族であり、トゥパク・アマル腹心の家臣。トゥパク・アマルの最も傍近い護衛官として常にトゥパクと共にあり、幾度と無く命を張って主を守ってきた。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちらランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。(月1回有効) (随時)