コンドルの系譜 第八話(223) 青年インカ
幾度と無く大波が逆捲き、折り重なって押し寄せ、右に左に波打ちうねり、轟々と唸りながら、全てのものを押し流していく。これほどの濁流の中に容赦無く呑み込まれたスペイン兵たちが、果たして、どれほど生き残り、水中から浮上したか、もはや推し量りようもない。激しく波打ち泡立つ水面では、家々から引き剥がされて弾き飛ばされた木戸が、ぐるぐると狂ったように回転している。その傍で、辛うじて水面まで浮上した兵たちが、ある者は丸太や荷車の車輪につかまり、また、ある者は葡萄酒の革袋を浮き袋にして、半ば溺れながらバタ足などしている。身を少しでも軽くするために、無我夢中で武具を脱ぎ捨て、腰の銃やサーベル、果てはポケットの中身まで、半狂乱で捨て去る白人兵たち。彼らは白い顔を冬の冷水の中でいよいよ蒼白にして、真青になった唇の奥でガチガチと歯を鳴らしながら、当ても無く助けを叫び続けている――……。それでも、生き残った兵たちは、何とか乗り上げられる高所を求めて、沈みかけた体で必死に泳ぎ続けていた。 ◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちらランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。(月1回有効) (随時)