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全7件 (7件中 1-7件目)

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回文アンソロジー。

今日の食べ物朝鶏そぼろとじゃがいものあんかけ(?)昼オムライス夜チンジャオロースそういえば昨日図書館で「回文」の本を借りてきました。で、回文を一つ考えました。ショボい。「ぅ～ん...新潟？にいがた、たがいに、おぉ」「お互い新潟出身、ってことで盛り上がってる二人...？」ということで「うそ！？互いに新潟！？そう」ができました。まだ短いですねー。椎名林檎が回文作ってるってミュージックステーションで言ってましたね。回文で作られた五七五七七なんてすげぇな。遊び心満載でいてちゃんと意味が成り立ってる。すげー。

2006.07.30

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蝉の声。

　僕は小学校で開かれる夏休みのプール行事が大嫌いだった。朝、目が覚めたら顔を洗って班毎に決められた集合場所に集まってラジオ体操を始める。このラジオ体操も嫌いだった。どうして皆で集まってこんなことをするのか。やりたい人だけが集まってやればいいのに。僕はそう思っていた。　ラジオ体操が一通り終わったら首から下げた「ラジオ体操カード」の今日の日付にスタンプを押してもらう。このスタンプが一日も逃すことなく押されている人は五百円図書カードがもらえる。僕の体操カードには、すでに空欄がぽつぽつとできている。これから毎日ラジオ体操に参加しても図書カードはもらえない。どうして皆で集まってラジオ体操なんかするんだろう。　スタンプを押してもらったら、家に戻って朝ご飯を食べる。あとはテレビを見たりダラダラして、十時になったらとうとう大嫌いなプールに行かなければならない。プール行事は午前の部と午後の部に分かれていて、僕は十時から十二時の午前の部ということにしていた。午後の部は一時から三時で、地獄を待って午前中を過ごした挙句、午後の時間を潰されるのが嫌だったからだ。　僕はプールバックを持って家を出る。夏休みなのに学校に行くなんてと思いながら額から汗を流し小学校へと向かう。ジーコ、ジーコと鳴く蝉の声を聞きながら坂道をゆらゆら上る。サンダルはコンクリートの熱で少し溶けているようだ。歩くたびにペタペタとくっ付くような感じがする。小学校に近付くにつれ、甲高い声が大きくなってくる。僕はあんな風にプールを楽しむことができない。僕は泳げない訳じゃない。ただ、泳ぎたくなかった。人前で泳ぐのも嫌だったし、大勢の他人が浸っている水の中に自分も浸るなんてことが、できなかった。　結局僕はいつもと同じように小学校へと向かう途中にある神社に行って、備え付けられた時計が十二時を示すまでボーっと蝉の声を聞いていた。

2006.07.10

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桜の舞う日。

　私達は公園の白いベンチに座って行き交う人々を眺めていた。小さな子供は桜に興味はないらしく、地面を歩き回る蟻を指でつんつん突いていた。　ふわりふわり風に舞う桜はやわらかくて心に気持ちいい。きっと誰もがそう感じているだろう。私が幸せだと思うのはこういう雰囲気だ。現実感が少し希薄で穏やか、私は今幸せを感じている。　ふと、私は今すぐに亮介と別れなければならないような気がした。とくに理由はない。私は突然別れなければ、と気付いただけなのだ。もう抑えることはできなかった。「ねえ、別れましょ」　隣に座る亮介の方に顔を向けず、ただ前を向いて、そう言った。亮介の体から熱い緊張が漏れてくる。「俺が悪かった。許してもらえないかもしれないけど、本当にそう思ってるんだ」　認めているだけだと私は思った。そもそも、なんの話をしているのかも理解できなかった。希薄な現実感は風に乗って空高く舞い上がりさらに私から離れていく。あら。現実感って桜の花びらと同じで風に舞うのね。「別れようって言ってるのよ」　幼い子供にきかせるように静かにゆっくりと、そう言った。きっと亮介は涙を溜めているだろう。口から息苦しい悲哀が漂ってくる。「好きなんだよ。別れたくないんだよ。どうしたらいい？どうして別れたいなんて言うんだ？なにか、俺、足りないか？俺じゃダメか？俺、もっと頑張るからさ」「ごめんなさい。もう行くわね」　立ち上がると亮介に手首を掴まれた。目から冷めた怒りが伝わってくる。やっぱり怒っているのだろう。私は別れる理由も言っていない。もしかしたら、別れる理由がないことに怒っているのかもしれない。私は亮介が嫌いになった訳じゃない。別れなければならないと気付いただけなのだから。　私はベンチに座り直した。亮介はまだ手を離してくれない。暖かい手の体温が流れてくる。この手で頬をスッと撫でられたら私は考え直すだろうか。この手で頬をピシャっと叩かれたら私は考え直すだろうか。この手はふわりふわり舞う現実を捕まえて私に返してくれるだろうか。そんなこと、私は望んでない。私はただ亮介と別れたいのだ。「現実感って、桜の花びらみたいね」　私はさっき気付いたことをそのまま亮介にも伝えた。亮介の目が冷めた怒りから困惑を示す目つきに変わっていく。「現実感も桜の花びらみたいに舞うのよ」「なぁ。なに言ってるか分からないよ。さっきから。もう帰って休もう」「そうね。疲れてるのかもしれない」　私達はベンチから立ち上がり、亮介の腕を振り払うと私は出せる力を振り絞って走った。私も現実感のように空高く舞い上がれるだろうか。前回の「夏のホタルと男が女」は「蛍」を書いたら結果的に「蛍を眺めてこんなことを思う恋人が居ても、いいんじゃないか」ってことになったんですけど、今回は「別れ」を書いてみました。結果的に「桜を眺めてふと自らを追い込む女が居ても、いいんじゃないか」ってことになりました。書き始めると随分とディテールが変わってしまう。

2006.07.07

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夏のホタルと男が女。

　俺はこいつの、恥ずかしげもなく自分のことを「あたし」と呼んだり、俺のことを「君」と呼ぶ所が気に入らなかったし、あたしはこいつの、恥ずかしげもなく自分のことを「俺」と呼んだり、あたしのことを「お前」と呼ぶ所が気に入らなかった。気に入らないことはいくつもあったけど、そういうことは俺とあたしにとってどうでもいい些細なことだと分かっていた。　夏になると近くの小川でホタルを見ることができたので、夜になると俺とあたしは一緒になってでかけた。ちょっと雨の蒸したような匂いがした。俺とあたしは小川に着くと背が低くて暗い草原をじっと眺めてホタルの光りを探す。照らす範囲は小さいけれど、ホタルの光りはたしかに強く緑色に光るのだ。俺とあたしは「あ」と息を漏らす。「こういうの、好きかもしれない」　俺とあたしは幽かな声で呟いた。　ホタルの光りは暗い草原をちかちかとリズミカルに照らしていた。

2006.06.26

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土曜日の僕は形而上学的存在だった。

　おそらく大抵の人がそうであるように、僕も暇になると普段考えないことを考えてしまう。自分は誰なのか。きわめて形而上学的な問題だと思う。僕が僕である必要はないし、僕じゃないと思っていた僕が、実は僕だったという可能性も捨てきれない。でも、実際に僕が僕じゃなくなることもないし、僕じゃないと思っていた僕が僕だったと気付いたこともなかった。土曜日、僕は退屈だった。　今日が果たして何回目の土曜日になるのか数えようと思ったけど、僕は暇で暇でそんなことをする暇がなかった。暇を持て余すにも暇が必要だ。僕は土曜日になるといつもこんな調子で、前に一度友達に聞いたことがある。「土曜日って、退屈だよね」僕は言った。「明日は日曜日だから最高じゃん」そいつは踊っていた。　踊りつきで答えてくれた友達には悪いけど、僕は全く最高じゃない。明日は日曜日でも今日は土曜日なのだ。土曜日、僕は退屈だった。　今日が果たして何回目の土曜日になるのか数えようと思ったけど、暇を持て余すにも暇が必要だから、今日は一日中寝ることにしてすぐに寝てしまった。寝ることは簡単だし、土曜日から僕を守ってくれる。　勝手にお母さんが部屋に入ってきて僕は目を覚ました。昼の二時だった。お母さんは僕の名前を呼んでも来ないので部屋に居るのか確かめに来てくれたみたいだった。子離れできてないのかもしれない。僕はお母さんに僕が土曜日症候群だってことを教えてないから、お母さんは何も知らない。だから、お母さんが部屋に入った瞬間、息子である僕が首を吊って死んでいるのを誰よりも早く発見できたかもしれない。土曜日、僕は退屈だった。　今日が果たして何回目の土曜日になるのか数えようと思ったけど、今日は僕の誕生日だから歳を数えることにした。十八歳。ということは、十八回は土曜日を過ごしただろう。　他の家庭はどうなっているかなんて分からないし、時代遅れなような気もするけど、誕生日ケーキには僕の歳の数だけ蝋燭が赤、黄、緑、と立っていた。もし蝋燭が一本でも多かったり少なかったりすると、その誕生日ケーキは僕の物ではなくなってしまう。僕は十八歳。土曜日、僕はやっぱり退屈だった。　今日が果たして何回目の土曜日になるのか数えようと思ったけど、今日は高校の卒業式だったから本当に数えてる暇がなかった。僕は寒い体育館の椅子に座り、呼ばれたら壇上に上がって卒業証書を受け取った。何も問題はない。僕は高校生じゃなくなった。土曜日、僕は退屈だった。　今日が果たして何回目の土曜日になるのか正確じゃないけど数えてみた。たぶん九六十回ぐらいは土曜日を過ごしたと思う。そして、九六十回ぐらい目になる今日の土曜日はいつもの土曜日とは違った。きわめて形而上学的な問題に対する、僕なりの答えが見つかったからだ。　僕には他の僕と区別する為に用いられる呼称がある。それがなかったら？　僕には他の僕と区別する為に用いられる年齢がある。それがなかったら？　僕には他の僕と区別する為に用いられる業種がある。それがなかったら？　こういうものを僕の表面から全て剥ぎ取っていくと何が残るか？小さくて固い、僕の芯みたいなものが残るのか？つまり、僕は僕でしかない。僕以外の僕は僕じゃないし、僕は僕以外の僕でもない。土曜日、僕は形而上学的存在だった。妄想三発目。「俺ってなんだろう……」から作りました。単純に自分の書く物が詰まらないのか、自分で書いたものだから楽しめないのか、分からないけど、こういう作品は自分は好きだ。もしかすると、こんなの書いたんだって、忘れるてるぐらい何十年後かに読んだら面白いと思うかもしれない。

2006.03.16

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ＨＯＭＥ　ＭＡＤＥ　ＱＵＡＮＡ。

　私はいままでに六つの財布を自分の為に自分で作った。赤、青、紫や黒。ピンクには悪いけど、ピンクは嫌いな色だから絶対に選ばなかった。だけど、人間の心は時間と共に変わるものだから、いつか、百個もの財布を作り終えた頃には一つぐらいピンクの財布があるかもしれない。　そう考えると、もしかすると、いまはまだ六つだからピンクが選ばれないだけで、私はピンクが嫌いな訳じゃないかもしれない。でも本当の答えは結局は時間なのだ。今は嫌い。後は知らない。　一つ目の財布は、長方形の厚紙だった。　家の中から厚紙を探してきて財布の形になりそうな長方形の寸法で切り取ってお札を入れられるように畳んでホッチキスで止めた。それだけだった。　こうやって生まれた私の一つ目の財布は、実に、本当に、貧相だった。簡単に説明してしまえば、一枚の厚紙を折り畳んだだけなので、厚紙と厚紙の間にできる隙間に何枚かの多くはないお札を差し込むだけなのだ。自分でも「ゴミかなあ」と思ったけれど、この財布は私が私の為に作った物で、世界にたった一つだけの財布だ。そして、この財布を使っていいと許されているのは私だけなのだ。　二つ目の財布は外装として赤い折り紙を貼り付けたもので、三つ目は折り畳むタイプの財布だった。そうして、六つ目の財布は一つ目と比べると随分本格思考の財布になっている。お札はもちろんのこと、カード入れと小銭入れまで作って、外装も折り紙ではなくキルト生地を貼り付けたりしている。こういうことをしていると、工作が好きで得意なんだろう、と思うかもしれないけど、私は工作は好きじゃないし、手先も器用じゃない。ただ財布を作ることに関しては興味があったし、楽しかったのだ。　私が買い物をしてレジで精算する時、必ずと言っていいほど店の店員は財布について語ってくれたし、私はそれが嬉しかった。まだゴミと区別がつかないような財布のうちは「ダサい財布だね」「貧乏なの？」などと言われたけど、改良を重ねるうちに「自分で作ったの？」「可愛らしいね」「あたしも自分で作ってみようかな」「俺にも作ってくれない？」と決して人気は低い訳じゃなかった。　そして私は、自分の為に作っていた財布を他人の為に作ることが商売になると気付いて、まず財布に「ＨＯＭＥ　ＭＡＤＥ　ＱＵＡＮＡ」というブランド名を与えた。マークは「Ｑ」だ。自己満足的な、私には「私が作っているんだ」ということがよく分かる。次に値段を決めた。税込み１００円。私は財布にお金をかけるなら、財布の中にお金を入れたい人間なので安ければ安い程いいと思ったからだ。　こういう風に私のブランドＨＯＭＥ　ＭＡＤＥ　ＱＵＡＮＡは音もたてずにひっそりと営業を開始した。毎日、晴れの日も雨の日も雪の降る寒い夜でも私は財布を作った。私は幸福だった。財布さえ作っていられれば他のことはどうでもよくて、勿論財布が全く売れなくてもよかったし、実は１００円という値段のせいで売れれば売れるほど赤字だった。黒字にしたいならワンコインということで５００円にしておくべきだったのだ。しかし、財布を作ることはできたので値段はかわらず１００円のままだった。　私が他人の為に財布を作り始めてから二年、今使っている財布は七つ目の作品で、私が作った全作品のうちたったの二つだけだったけれど、ピンク色の財布は確かにあった。妄想二発目。「あたしの財布は手作り」という一言から作りました。時間の流れが上手く表現できてないような気がする...。

2006.03.15

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猫の声。

　あたしは猫の鳴き声が苦手だ。メタファーでもないし、何かのシンボリックでもない。犬の鳴き声はいい方だ。でも猫の声はよくない。　なぜ犬はよくて猫はよくないか、あたしに分かることは犬は犬だし猫は猫。つまり、そういうことなんだと思う。　雪の溶ける三月にあたしは青い首輪をした猫を拾った。まだ硬い。この硬さから推測するに、そんなに日は経っていないんじゃないだろうか。首輪をしてるってことはきっと飼い猫だろう。飼い主は飼い猫がこんな所で凍死してるって想像できるだろうか？　猫には可哀想だけれど、それはないだろう。あたしが実際に感じたわけじゃないけど、いつかは帰って来てくれると思いたいし、きっといい人が拾ってくれると思いたいだろう。　けど、現実はどうだろう。最悪な人間に最悪なシチュエーションで拾われてしまった。あたしは猫の鳴き声が苦手で、猫は凍死していたのだ。　猫の処理には困ってしまった。死骸と言っても、飼い猫は飼い猫だ。いや、元飼い猫と言った方が正しいのか。あたしは元飼い猫を勝手に処分していいのか、燃えるゴミに出せばいいのか、燃えないゴミに出せばいいのか、そういうことで悩んだ。いっそリサイクル。けど、コンクリートを掘る力などあたしにはこれっぽっちもなかった。　悩んだ挙句、元飼い猫には可哀想だけれどあたしと一緒に生活してもらうことにした。猫の死骸は鳴かないのだ。　実際に飼ってみるとそれなりに大変だった。死後硬直してるうちはまだ置物のようだったが軟化してしまえばリアルな死骸。今はまだ感じられないけどそろそろ臭いも危ういんじゃないだろうか。あたしは猫を何重にも新聞紙に包んで、ビニール袋に入れてあげた。　そして、それはもう猫じゃなかった。猫の形を残す腐り始めた肉の塊だ。　餌も水もトイレの世話もした訳じゃないから当たり前かもしれないけれど、あたしは相変わらず猫の鳴き声が苦手だ。テレビだろうと電話だろうと猫の鳴き声は聞けば不愉快になる。拾ってあげたあたしに対して猫の死骸は何もしてくれなかった。　これが正しい選択だったのかは分からない。猫の形をかすかに残した腐った肉の塊は、桜の咲く四月に燃えてなくなった。妄想一発目。新たに「妄想。」カテゴリーを作って、「猫の鳴き声は嫌い」という一言から短編を作りました。

2006.03.14

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