スキー場で私のスキーを担いで降りてきたヒト
大学の1年生の春休みの初日,高校の同級生のM子と大学の同級生のF子の3人で電車に乗ってスキーに行ったのですよ. M子は初心者に毛が生えた程度,F子はまるで初心者.ワタシは小6以来中断していたので初心者並みに逆戻りなのにスキー部のマネージャー助手を成り行きで引き受けかけていたところ,という目茶危ないご一行でした. 昭和54年頃でしたから,毎年のようにスキーの性能が様変わりしていた頃ですよ.マネージャー助手を引き受けるためにワタシはスキーを新調したばかり.小学生時代のスキーは処分しようと思っていたら,F子が貸しスキーは高いから自分に使わせろと主張しました.「こんなもんは使えないとスキー部のマネージャーに言われたんだよ」というワタシの言葉に耳も貸さず,彼女は強引にワタシの古いスキー,ビンディングがバネになっていた超旧式のスキーを履いてどっかに滑っていってしまいました. ワタシはM子とつるんでどんくさく滑っていましたが,夕方になったので,そろそろ帰ろうかとゲレンデ脇のロッジでF子を待っていました. しかし,彼女は現れない.春の平日のスキー場は人影もまばらでした. ふと見るとえらく背の高いスキーヤーがF子に貸したワタシの古いスキーを担いで滑り降りてきたのでした.随分,格好の良い青年です.と見るとF子が下りのリフトに乗って手を振っています.リフト降り場に駆けつけたワタシとM子は,そこでF子と件の背の高い青年と落ち合いました.更に大学のスキー部のメンバーまでが集まってきました.全くの偶然だったのですが,その青年は医学部の2年先輩であり,あまり熱心でないスキー部の一員であると同時に,F子と同じバスケット部のキャプテンでもあると知れました.こけた拍子にスキーを谷底に流してしまったF子を見かけた彼は,彼女にリフトで降りて待ってるように指示し,スキーを回収してくれたのでした. その後,スキー部の顔見知りの面々とココアなどを飲んで「あんな旧式のスキーは危ないからダメ」とお説教された後,彼は愛車の三菱ジープに私たち三人を乗っけて家まで送り届けてくれました.彼は終始無口でしたが,誠実な人柄のように思われました. その彼が,まさか,その後のスキー部の合宿の最中にあんなに激しくワタシにアタックしてくるとは.・・・・そのときには予想だにしませんでした. というのが,夫との出会いに関するワタシの記憶なのですが,夫はワタシのアタックが激しくて抗しきれなかったなどと,全く逆のことを言っております.でもその頃のワタシは,本当は別のヒトのことが好きだったのです.だから,先に惚れたのは絶対に夫の方なのですが,これはココだけの秘密です.