人材と人財
近ごろ『人材』という字を『人財』と書かれているのをよく見かけるようになりました。人財・・・ つまり「人は財産である」という意味からこのような字が使われるようになったのだと思いますが、どうして「人材」ではダメなんでしょうか??たぶんここ10数年来でしょうか、企業人のお偉いさん方が発した言葉を引用するなど、自己啓発系の本やセミナー等々の影響でこのような使われ方がするようになったのではと思います。私が察するに「人財」という字を使う多くの方々は、「人材」という言葉がどのようにしてできたのか、たぶん起源を知らずして安易に使っているようにも感じられます。言葉ができた背景には何百年、何千年と長い歴史があるわけで、一個人が生きてきた、たかが何十年とは比較にならないわけですので、お偉いさんが言われたからといって、そのまま鵜呑みにするようなことになってはいけないと考えます。篤姫が母親から教えられた「一方聞いて沙汰するな」。『どんな人の声にもまんべんなく虚心に耳を傾け、その人その人の身になってよくよく考える』ことを大切にするように。もとの「人材」という言葉の真の意味を知ったならば、この「人財」という言葉は、なかなか使えなくなると思います。----------------------------------------------------------------------------人材とは・・「人材」の「材」は、「木」と「才」から成り立っている。今の木は植林されているものが多いので、途中で間引きされたり、枝打ちされたりして、まっすぐで節の少ないものになっている。漢字が生み出された頃の木材は、自然のままの木を切り出していたので、曲がったり、節がいくつもある木のほうが多かった。木を使って何かを作る時、まっすぐのほうが作りやすい。自然の木だと曲がったり、節が多かったりで面倒で作りづらいことが多い。でも、曲がった木は上から横から強い力を受けたとき曲がっているところがその力を吸収してその力を両端に逃がすために折れにくくなる。節が多いところはとても固いので加工に時間がかかる。しかし、上からの力に強いばかりか、油を含んでいるので腐りにくい。だから長持ちする。そのような理由で、曲がった木や節のある、いわゆる「クセのある木」を上手に使って工事をすると「台風や地震」に強く、しかも「長持ち」する建物ができる。特に波による強い力を受けて破壊される心配が多い木造船は、胴体を内側から支える骨組の部分には、はじめから曲がっている木を何本も使っている。つまり「木」のクセが強みになっており、これが「適材適所」の語源にもなっているのは興味深い。クセのある木を効果的に使ってよいものを作るには、当然レベルが高い「特別な才能」が必要になります。そこで「木」の横に才能の「才」をつけたのが「材」の字の成り立ちとのこと。とすると「財」はということになる。財の「貝」はお金を表す。つぼの中に入れたままではお金は生み出さない。そこでなにか「事業」をしなければならない。どんな商品、どこの地域、誰に対して、どんな売り方などを考える。実際にこうするにはこれを担当する社長が「高い才能」を身につけなければならない。このような事情からお金を表す「貝」の横に才能の「才」が「財」の字の成り立ちとのこと。と言うことは「木」を人にたとえていくと、「人材」が正しい使い方と言うことになる。「人財」は社長やそれに類する人のこと。----------------------------------------------------------------------------コレを知った上でなお「人財」という言葉を使うのなら、それはそれで良いと思います。しかし、言葉ができた歴史の重みを感じて欲しいなと思います。言葉の意味はとても深いものなので安直に変えて使うものではないと考えております。