かぞく
ヘレン・オクセンバリーの「かぞく」という絵本がある。赤ちゃん向けの絵本で文字はまったくない。ページをめくるごとに、赤ちゃんがいろんな家族のメンバーとツーショットで描かれているという本である。順番にめくりながら、「mama、baba(お父さん)、姐姐(ジェジェ、お姉さん)」と言ってあってげると、納得したように絵を眺めている。しかし、次の哥哥(ガガ、お兄さん)では何かよくわからない、という雰囲気で見ている。たしかに、姐姐はたくさん出会ったが、哥哥はあまりいっしょにいた経験がない。次はnainai(おばあちゃん)。なんとなく反応がないので「おばあちゃん」と言い直すと、「わかるよ」という感じで見ている。その次は最初から「おじいちゃん」と言ってみた。ここで初めて本を手でぱんとたたく、という反応を見せた。やはりおじいちゃんには思い入れがあるのか。最後のページにはもう一人の赤ちゃんが登場する。ここでは、本に向かって身をのりだし、「なんじゃこりゃ?」というような、驚いたような表情を見せる。ここまで、自分と家族(他の人)という感覚で本を眺めていたのではないかと思う。突然二人の赤ちゃんが現れて、「理解不能」という感じになったようだ。Hueiは自分との関わりで他者をとらえているんじゃないかと思う。一心同体のママ、毎日現れたり消えたりするパパ、数ヶ月に一度遊んでくれる、おじいちゃん、おばあちゃん。最後のページで現れた赤ちゃんを、どうとらえたのだろうか。きょうだいはいないから、自分が二人いるように見えたのか。