日本製紙、三島製紙の株式交換についての私見
日本製紙グループと三島製紙の株式交換 11月5日に両社の株式の交換比率が発表された。三島製紙 1 対 日本製紙グループ 0.00061 である。 日本製紙グループの2日終値は334,000円であり、0.00061を掛け算すると、三島製紙株式は203.74円となる。これは、2日同社の終値が239円であったことから、-14.8%のディスカウントTOBといえる。しかし、このM&Aは、そもそも23日に一部マスコミにリークされ、24日に発表となっている。したがって交換比率の元になる株価は22日の終値を使ってみよう。(注:日本製紙側発表では22日にもマスコミが何か報道したらしいが、三島製紙側はコメントしていない)これを使うと、日本製紙 348,000円ですので213円であり、同日の三島株は184円であり、+15.4%のプレミアムを付与していることになる。15.4%のプレミアムの多寡は不明であるが、現金TOBと違い、日本製紙グループの将来性なども考えなければならないであろう(ちなみに日本製紙株は348千円 → 334千円へと-4%の下落で、プレミアムも剥げ落ちている)。仮に、10月22日以前の株主の方は、184円 → 約193円なので5%程度のプレミアムにしかならない。株式交換発表直後に日本製紙側のプレミアムの思惑買で三島製紙株を買った投資家がいた。22日184円、23日234円へと27%もジャンプアップしていた。しかし、交換比率の発表が遅れ、6日終値ベースでは193円となっている。したがって、思惑買いの投資家は234円辺りから、195円前後に大きな損失を出したことになる。もっとも思惑買いが 「スケベ根性」 という種類の意見もあろうが、こういったことの積み重ねで相場が活気付き、皆さんの財産・資産も増えるというもの。製紙業界は先行きあまり明るくないといわれているが、他業界では一般的に「次はあの会社だ」といった波及効果もある。しかし、である。24日の発表時点で、交換比率を出しておれば、こんなことにはならず、三島製紙の株主も市場の日本製紙への見方ももっとポジティブだったかもしれない。プレミアムの多寡を語れただろう(もっとも株式交換なので、お互いの株価次第であるが)。三島製紙は四季報によれば、三島製紙自体は売上高360億円、経常利益約3億円の企業規模で時価総額も58億円程度となっている。特種製紙が得意で、たばこ巻紙がシェア首位とのこと。したがって、三島製紙を買収することで、そんなに大きなインパクトがあるとも思えない(だからといってプレミアムが低い理由にはならないと思う)。ちなみに時価総額58億円で自己資本約102億円ありますが・・・。ただし、合併後のシナジーや事業構想についての発表があるものの、三島製紙の統合が、どのくらいのシナジーをもたらすのかを会社側がクリアに説明しないため、さらに評価が難しくなっている(日本大昭和の方の影響のほうが圧倒的に大きいのでオマケぐらいに思っているかもしれない)。 10月29日発表の「日本製紙グループ事業再編」によれば、56億円のシナジーが発揮できることになっているが、三島製紙分以外の分があり、線引きが難しい。 上位10位の大株主の合計持株も51%あり(07/3現在)、1位の常盤ホールディングスは実質みずほコーポレート銀行(の系列不動産会社)で、無風で交換成立も視野に入ります。なんだか、契約締結時には、「まだ評価中」 だったのでしょうか。値段決めずにはんこ押す(当然仮金額はあるだろうが)のも・・・。結局は株主は経営者に忠実だという自信があるのでしょう。先般採り上げた、シティ・日興の場合でも、シティの株価についてはレンジを示し、解釈の余地を残していたが(これは経営陣がシティの株価の先行きをネガティブに見ていた証左だろう)、タイミング・考え方(株式交換時に同時に交換比率・考えかたを公表している)、あたりはしっかり数式で示しており、一応株主としても、透明性がある。今回の株式交換およびレンゴーや北越製紙(注:社長はこの2社との提携を「2枚の切り札」と強調している)、さらには工場の統廃合んど次々と再編生き残り戦略を進めていく姿勢は評価できる。しかし、交換比率と子会社化を時間をずらして発表する、ややシナジーなどの説明不足などもう少し株主説明責任も力を入れてほしい(北越との提携なんてものすごくきちんとシナジー効果を開示しています。理解できなくもないが)「日本製紙が目指すもの」王子-北越のTOBへ「介入」した、と大きく非難を受けた日本製紙。そのことがかえって企業価値の向上に目覚めさせているのかもしれません。北越製紙は「戦略的提携」といいながら、2社合計で5年間で300億のシナジーを見込んでおり、まるで経営統合したかのようです。このシナジーが取り込めれば、わざわざM&Aをすることなく、経営改善が出来ることになります(そんなにうまくいくかなあ)。 ただし、株価はしっくりいきませんね。 「介入」は06年8月でした。その当時40万以上あった株価が35万円を割り込んでいます。06年12月には、やっと、北越製紙、三菱商事との戦略的提携の発表に至っていますが、原料高など先行き不透明感から値を下げています。2回の再編計画(06年12月および今回)、これでも株価の向上となるか。要注目。