オートバックスセブンの転換社債型新株予約権差止め請求について その2
注:本件は東京地裁決定後に書いています参考 オートバックスセブンの転換社債型新株予約権差止め請求について その111月12日、東京地裁は英国投資ファンド、シルチェスター・インターナショナル・インベスターズからのオートバックスセブンが取締役会決議した2本の新株予約件付転換社債の発行差止めにかかる仮処分を却下した。これにより、同社は約660億円の資金調達に成功する。詳しい決定分がわからない(誰か教えてください。東京地裁の判例検索は素人では難しい)ため、新聞コメント程度しかわからないが、従来の同じ格付けの会社と比べて、有利発行に当たらない、という主旨が述べられているという(日経新聞11月13日朝刊)。実際の株価は、私が書いた、A種類株式疑惑? 以降、下落をたどっています。かつての株価なら2850円の株価は、3000円がざっくり平均株価とすれば、ぎりぎり有利発行にならなかった可能性があります(注13日終値:2,395円で、前日比20円安)。しかし、仮に全額無事転換されると、発行済み株式総数の35%にもなる本件転換社債(潜在株式数)は、経営支配権の確立(前回ブログ)および株式の希薄化を招きます。仮に660億円で、何もM&Aしなかった場合は、従来の株主の1株あたり利益(EPS)は35%程度ディスカウントされることになります。07年3月期当期利益 9,165百万円 A現在の発行済み株式総数 39,255,175 BA÷B=233円 EPS12日終値 2,415円 ÷ EPS = 10.4 (PER) ちなみに東証平均は16~17倍(12日現在)PBRは0.55倍 ちなみに東証平均は1.6から1.7(12日現在)全額転換後、発行済み株式総数 39,255,175+(2,890円で転換したとすれば、22,491,349)= 61,746,524株 CA÷C=148円 EPS148 ÷ 233 =63.5%(▲36.5%)となってしまいます。したがって、従来どおりのEPSを確保するためには、現在の株数で14,387百万円の純利益が必要となります(株価が理論どおり回復する前提ですが)。決まってしまったものはそれで受け止めるとして、本当に何をM&Aするのか? 海外はどう見ているのか?と思い、フィナンシャルタイムズを見ると、こんなニュースがあった。 Interest in Halfords Fuelled by Autobacs (10月29日付)Halfordsに興味を示すオートバックスが給油 とでも訳すのか?要するに、オートバックスは英国の同業であるHalfordsにM&Aを考えているとのことだ。その軍資金を「給油した」と。この種の(あくまでフィナンシャルタイムズに掲載されている記事です。投資は自己判断で)記事は、実は2005年10月ごろから継続しており、オートバックスは同社の5.1%の大株主であるという。05年10月26日(2年前)にはTakeover talk boosted Halfords, the vehicle accessories and cycle retailer, up 2.6 per cent to 276p. Talk again centered on Japanese retailer Autobacs Seven, with which Halfords has a collaboration agreement.(業務提携関係にある、日本のオートバックスセブンと再度買収協議を行ったとされるハルフォードは2.6%Upの276ペンスとなった)との記載がある。2005年の7月ごろに業務提携を締結したとされ、当時は同社の業績が低迷していたこともあり、同社のCEOも弱気な発言をしていた。しかし、その後ハルフォードは業績回復に成功しており、円安もあいまって、時価総額は1ポンド226円換算で1720億近くになる・・・。Halfordsとはそっくりですね。英国、アイルランドを中心に426店舗を保有するカー用品、自転車・バイク・キャンピング用品などの小売である。売上高規模はオートバックスが勝るが、利益規模では業績回復したHalfordsの方が一枚上手である(競合状況とかわかりませんが)。一気にM&Aで業容拡大を図るのは、前向きな話でしょうが、ではなぜ、第三者割り当てなのかしっくり着ません。仮に、ARCM、SK Advisoryが 「投資家」 であれば、オートバックスに無茶なM&Aを勧めないはずです。理論的にはシナジーやハードルレート(要するに採算利回り)を超えるかとか、買収後の統合がうまくいくのかなどを厳しくチェックするはずです。彼らの 「果実」 は統合がうまくいき、2890円でやっと転換でき、その後の更なる株価上昇を期待しなければならないからです。また、オートバックスよりも時価総額が大きい企業の買収となると、リスクもありそうです(M&Aに踏み切る英断は勇ましいと思う。攻めの経営ですね)。とりあえず、本件転換社債に当たり、資金使途、M&A というのはそれらしき話がありますし、シルチェスターも「大きなM&Aは難しいのではないか」とコメントしていたのはこのことだったのでしょうか。使途がありそうなことはわかった(裁判で陳述できそうにないが)。 割り当てが特定少数なことはわからない。M&Aが成功するか、M&A後の統合が成功するか、そんなことは神のみぞ知る。また、2007年2月にロンドン証券取引所から撤退したのも腑に落ちない。株式交換という一手があったはずだ(敵対的買収が怖くなければだが)。外国人株主が怖くなったのか?しかし、今回のCBはロンドンで発行された。 コーポレートガバナンスとM&A、という立場からは、26日に取締役会決定し、翌月12日に発行・引受け、ってことは一般株主には 「知らない間に」 起こってしまうタイミングです。株価が低迷気味で希薄化や支配権が強化されそうな背景からすれば、もっとちゃんと説明してほしいものです。今年8月にアドバイザリー契約をしたばかりの方にいきなり第一位の株主とは、「俺たちは何やねん」 と言われて、何か言ってほしい気になります。10年近くの株主である、シルチェスターさんは、この短期間のタイミングでよく仮処分申請まで持っていけましたね。それも感心。 今となっては、今後の展開を見守るより他ないですが・・・。地裁決定分がわかれば、また「素人」分析してみたい。誰か教えて。