お願いしますよ、お姑さま!
ピィンポーンッ玄関のインターフォンのカメラに写るその姿は、お姑さま。手に何か持っている・・・・。嫌な悪寒。いえ、予感。姑「あのねえ、あなたのところ、絵飾らない?」ほらっ、キターーー!!!家に飾ろうとしてるっ!私「ウチはもう飾る場所もないし・・・」やんわり断ってみるが、聞く耳持たず。姑「私の先生の絵なんだけどね」私「あぁ、〇〇先生の絵ですね」お姑さんの師匠である〇〇先生の絵は私の趣味じゃないだよ。オラァ、ゴッホの幻想的な「星月夜」が好ぎだー。姑「そうなのよ。昔、20万で買ったんだけどね。なんで買っちゃったのかしら。買わなきゃ良かったわ。ウチに飾っておくと、気分が悪くなるのよ」お姑さまは、その先生から厳しいご指導を受けていて、絵を見ると先生を思い出し、イヤな気分になるらし~。私「私、あの先生の絵は雪の風景ばかりで暗くて嫌いなんですよぉ」はっきり言ってみる。姑「暗いって言ったって、この絵はそんなに暗くないのよ。見るだけでも見てみない?」デター!!!見るだけでも見てみない攻撃っ!服のお下がりをくれるときも「要らない」と数回断った後、見るだけでも見てみない→ちょっと着るだけでも着てみないって言うもんね。服はこっそり捨てられる。絵は、どっこい、そうもいかねえのさ、はっつぁん。私「見なくても雪の絵でしょ。私、雪国生まれじゃないから、雪に馴染みもないし、雪の絵を見ても全然感動もしないんです。ゴッホの絵ならもらいますけど、ほっほほ。〇〇先生の絵はどうも・・・」姑、ガサゴソと箱から絵を取り出し、つかつかと玄関に入って、キョロキョロと見回し「この辺の壁がいいかしら~」と目をギラギラさせながら、壁に当ててみる。や、やめてぇえええええ!姑「ほうら、明るい絵でしょ。20万で買ったといっても、今、買えば7、80万はするのよ」私「じゃ、売ったらどうですか?」直球を投げてみる。本当にいらないつーの。捨てるのも勿体無いし、自分の家に飾るのはイヤで、何が何でも我が家に飾るつもりなんざますね。姑「売っても、額縁代の2、3万にしかならないのよ」私「じゃ、先生が死んでから売ったらいいじゃないですかー?!死んだら値上がりするかも。先生、80才過ぎてるし」なんちゅーことを!でもこっちも必死。姑「死んだら、一銭にもならないのよ」私「外から帰って玄関に入るたびにこの絵を見て暗い気分になるのは嫌なんです。ほんと、要らないから止めて下さい。お義母さんのところ、天袋が空いてるって言ってましたよね。入れておいたらいいじゃないですか?」お願いしてみる。姑「この先生は芸術院会員なのよ。」得意げに言う。ぶわっはは、ああ言えばこう言うにゃ。私「芸術院会員の偉い先生の絵でも、この先生の絵は嫌いなんです。ほんっっっっっっと、止めてください。ああいう明るい絵だったらいいんですけど」お姑さんの絵を指さしながら言う。お姑さんが描いた赤、ピンク、紫の明るい花の絵が玄関にあって良かった。ほ~っ姑「そう?あれの方がいい?」突然、私に赤ベコが乗り移り、無言で何度も頷く。お姑さまは絵を再び袋に入れ、箱に戻し帰って行った。はぁ~、やっと諦めてくれた。おぉ~~~。良かったあ。