今日観た映画です!
清々しい朝が多くなり、桜も満開すっかり春になりました
久し振りに洋画など鑑賞してみようという気になり、WOWOWで撮り貯めた中から3/13放送、W座からの招待状「おみおくりの作法」という作品をチョイスしてみました
もしかして「おくりびと」の洋画版?と思ったのですが、最近の終活(エンディングノート)ブームで琴線に触れました
ロンドン市内の民生係に同行して、実在の人物や出来事について取材を重ねた作品だそうです
イギリス版ヒューマンドラマ、登場キャストも少なく、地味な行動が淡々と描かれている内容に途中で観るのやめようかな?と思ったのですが徐々にジョン・メイの事務的でない誠意ある働き方に、生きることと死ぬことを考えさせられて、このドラマにのめり込んでいきます
何かいつも貧乏くじを引いてきたような風采の上がらないジョン・メイは44才の独身中年男、ロンドン市内のケニントン地区でたった1人で民生係をしている、性格はいたって真面目で几帳面で丁寧、クロスワードパズルが得意で、道路を渡るときは左右確認してさらに左を見て渡る、石橋を叩いてから渡るような性格、毎日、自宅アパートと職場へ規則正しく川の流れのように
受け持ちの地区で孤独死した引き取り手のない人がでると、現場に出掛けて部屋の状況を把握し、手掛かりになりそうな写真や遺品を職場に持ち帰り、インスピレーションを働かせる、どんな人生を?宗派は?どこかに身寄りはいないか?調べ推理する、まるで人生のピースを組み立てるように
誰も身寄りがいない場合は自分が唯一の参列者になって、教会を決めて弔辞を考えて、葬儀で流す音楽も選ぶ
飼い猫を娘に見立てて暮らしていた女性には
“私たちはここに集い、ジェーン・フォードを送ります、彼女は世界に平和が訪れた1945年の夏、スカボローヒに誕生、フォード夫妻の一人娘でした
夫の出征もあった時代、思わず娘を授かった喜びはいかばかりだったか
彼女は人生を謳歌しました、晴れた浜辺の暖かさ、シンプルだが上品な首飾りと赤い口紅、またフラメンコにも情熱を傾け、赤い衣装をまとい華やかに舞いました
晩年は猫のスージーに愛情を注ぎ、幸せな日々を、クリスマスは共に盛大に祝うのが常でした”
土葬にも立ち会い、墓守から「また1人ですか?」 「残念だが......」
彼自身を孤独で毎日、職場と自宅アパートの往復の単調な暮らし、夕食は決まって魚の缶詰めとパンとリンゴに紅茶、部屋は几帳面な性格があらわれてきちんと片付いています
そんな彼の寂しさが一番現れているシーン、担当した死者の残した写真を葬儀の後に持ち帰り、あたかも自分の家族か親戚、友人のようにアルバムに貼ってゆく
そんなジョン・メイの静かな日常に波紋が立ちはじめた
ある日の案件は彼のアパートの真向かいに住むビリー・ストークという男だった、会ったことはなかったが、身近におきた出来事にショックを受ける
そして、民生係の地区が統合されて22年働いた職場を解雇されてしまう、合理化をはかる環境に彼の丁寧な仕事が逆に仇となったのだ、黙って解雇を受け入れるが、最後の案件だけは自分にやらせてくれと珍しく懇願する
彼は残された写真をもとに、ビリー・ストークの人生を訪ねる旅にでる
以前の職場の同僚、恋人、刑務所、内務省を訪れて娘の面会があったことを突き止める
犬のシェルターで働くビリー・ストークの娘と会い、疎遠になったいきさつを聞く、フォークランド紛争のときは荒くれパラシュート部隊に従軍したと聞き、老人ホームに戦友を訪ね、退役後はホームレスになったということで当時の知人にも会った、しかし誰も乱暴者で厄介者の葬儀には..........
ワンポイントで娘の家でジョン・メイがニヤっとするシーンがあります、それはソファーの片足が壊れて本を積んで使っていること、彼は現場から去るとき、必ず後ろを振り返ります、もう一度、故人の人生を確認するかのように.....ビリー・ストークのソファーも片足が壊れて本が積んでありました・・・・DNA?
ある日、嬉しいが、ビリー・ケリー(娘)から、会いたいと、すぐに向かうもビックリする行動に!職場に駐車してあったクビにした上司のアウディにオシッコをひっかける
ケリーと葬儀の相談をして別れ際に「葬儀の後、どこかでお茶かココアでもどうかしら?」ケリーもまたジョン・メイの親身になってくれる気持ちに心を動かされたようだ.......ジョンに春が来た
彼は戻ってすぐにラジカセ?と犬のマグカップを2つ買った、何かが変わった、そしていつもなら左を見て、右見て、更に左を見て道路を渡るのに、反対側のバスに乗る為に急いで飛び出した.......
ビリー・ストークの葬儀は賑やかなものになった、結局みんな参列してくれた、その後ろを司教と墓守だけの葬列が通る、ケリーは何かを感じたのだろうか?振り返る
ビリー・ストークの参列者が帰る中、たった一人、共同墓地に埋葬される男がいた
邦題は「おみおくりの作法」だが、原題は「STILL LIFE」(静物画)です、モノトーンの暮らしに僅かな色彩が入りはじめる、観るものによって感想は違うと思いますが、いつも参列者のいない彼の仕事、私はやっと最後の仕事でビリー・ストークの娘が参列することで、達成できて幸せだったんだと思います、ちょうど自分の墓地に寝そべるようにアスファルトに幸せそうに........
彼は問う、「葬儀に出てくれませんか?」
感動的なラストシーン、最初にビリー・ストークがそして、これまでおくった人達やジェーン・フォードが、彼が見送った多くの故人に見送られます
身寄りのない人の葬儀と、それを世話する地方公務員にスポットを当てた映画でしたが、レイチェル・ポートマンのテーマ曲がマッチしていい映画でした