宝塚歌劇「エリザベート」~ジルヴェスター・リーヴァイ作曲の曲目を事前研究の巻
池田泉州銀行「すみれの花定期預金」の抽選に見事当選!いよいよ人生初のタカラヅカ観劇となり、予習に忙しい。気になるのは音楽で、初めは「ハプスブルク帝国の話だからウィンナーワルツ三昧か」と思っていたが、それは大きな間違いであることが分かった。この出し物は、ウィーン発のミュージカルの直輸入である。そこで楽曲を担当した「ジルヴェスター・リーヴァイ」のオリジナル曲がベースとなっているのだが、それは限りなくオリジナルで、シュトラウスなんか最初からお呼びじゃないのだ。 とにかくどんな曲なのか、観劇当日にじっくり聴けばいいのだが、もう待てない!渋谷のツタヤへ行ってCDを借りてきた。こんなマニアックなCDは、我が村にあるツタヤで置いてるはずがないのだ。さて、ジルヴェスター・リーヴァイ作曲、ウィーン舞台連盟オーケストラによる演奏のCD(Originalaufnahmen aus dem Musical Elisabeth)をじっくり鑑賞してみた。もちろん、ウィーン版だから全部ドイツ語である。ありがたいことにCDに翻訳が付属しているから、聴いてるだけでおおよそ情景が浮かんで来る。エリザベートとヨーゼフ1世は、ウィーンのアウグスティン教会で結婚式を挙げる(5:Alle Fragen Sind Gestellt)。ラウシャー大司教が「それがあなたがたの意思であるなら、はいと答えなさい」と述べる訳だが(Wenn das Euer Wille ist,so antworret mit Ja!)、それに対してエリザベートが凛とした声で「Ja!」と答えるシーンが胸を打つ。その直後に重々しい鐘の音が響き渡るのだ。その音色はまるで弔鐘のようで、後に起こる悲劇を暗示するのである。披露宴の舞踏会(6:Sie Passt Nicht)は、普通なら皇帝円舞曲でしょう!と言いたいところだが、まるでショスタコーヴィチがスターリンに内緒で遊び半分に作ったようなシニカルなワルツである。舞踏会の場で、エリザベートの父マックス公、フランツの母ゾフィーが互いに相手の新郎新婦を愚痴ってるという構図である。シュトラウスのノーテンキな音楽では、この場面をうまく表現できないのは確か。うーん前途は多難だこりゃ。案の定、待っていたのは嫁と姑の不毛な争いだった。これだけはいつの時代も世の男性を悩ませるのである。城下の臣民は呑気に「ラクセンブルク・ポルカ」で盛り上がっていたのだが、現実はそれどころじゃ無いのだ。 8:Eine Kaiserin Muss Glanzen で表現される嫁姑のヤリトリは、ほとんど漫才に近い。姑:あなたいつまで寝ているの!嫁:だって疲れたんだもん!姑:怠惰は許しません!嫁:今日は馬に乗りたい!姑:なんと品のない!嫁:あなたはなぜ私を非難ばかりするの?姑:あなたは慎みも無ければ礼儀も知らない!嫁:あなたは私に嫉妬なさっているのだわ!姑:嫉妬ですって?!嫁:ヨーゼフ助けて!お母様がいぢめるの! もう東海テレビの昼ドラ状態。俺ら男からすりゃ、「あっ、洗車するの忘れたから今から行って来るぅー」と逃げ出すしか無いよな。とうとう夫婦間にヒビが入り始め、ウィーンのカフェでは「オーストリア外交は困難に直面しているというのに、皇帝夫妻はちょっとヤバいらしい」と知識人らがウィンナーコーヒー片手にデーメルのザッハトルテを頬張りながら(?)あれこれ噂話に花を咲かせる(10:Die Frohliche Apokalypse)。このヘンは19世紀のオペレッタを思わせる雰囲気だ。11:Mach Auf Mein Engel! わたしの天使よ、ドアを開けておくれ・・・自室に閉じこもってしまったエリザベートに、夫フランツ・ヨーゼフ1世がドアの前にひざまずいて懇願するシーン。彼もまた「かわいそー」という感じがしてくる。とにかく彼は誰よりもエリザベートを愛していたのである。それなのに、それなのに、わたしの天使よ、なぜ分かってくれないのか? ヨーゼフ1世は忍耐の人であった。他人の苦しみを進んで分かち合い、自分の苦しみは自分の胸にしまい込むような人柄は、帝国中の敬愛を集めたのである。確かに、外交的判断で数々の誤りもあった。それでもハプスブルク帝国が空中分解せずに20世紀初頭まで持ちこたえたのは、彼の不屈の精神と驚異的な忍耐強さのなせる業だったのだ。 それなのに、自分の奥さんにすら理解されないというのが彼の悲劇でもあった。どうしても、どうしてもヨーゼフが気の毒でならない。帝国臣民の思いもほぼ同じであった。だからエリザベートの訃報が伝えられた際、多くの臣民はヨーゼフへの同情に向かったという。拙者もヨーゼフへの思いを別項でいろいろ書いていた。→こちらも参考までに・・。大体上記の曲目がジーンと来たところ。肝心の宝塚版であるが、かつての公演をCDにしたものが存在していて、販売サイトの試聴コーナーで各45秒ずつ聴いてみた(CDは売り切れ!)。聴いた感じでは、ジルヴェスター・リーヴァイの曲目がそのまま引用されているようだ!さーて今年のエリザベートは前例踏襲と行くのか、宝塚オリジナル曲をいくつか出すのか、大いに注目である。