バトル30分
さて、風邪でうんうん言ってる時に、でかい仕事が入ってきました。 日本ではあんまり…ですが、こちらではなつメロな感覚で有名なジョージ・サラグッドという人のオープニングをさせてもらう事に。代表曲にWho Do You Love, Bad To The Bone, One Bourbon, One Scotch, One Beerなどがあります。あんまし深くないからっとしたロック・ブルース。結成40周年の長いツアーをはじめたそうで、ツーソンは2箇所目だとか。 正確には2週間くらい前に 「予定が合うならあちらのマネジメントに申し込みますがやりますか?」 というオファーがあって、もちろん、とふたつ返事だったのですが、全然返事が来なくてヤキモキ。やっと4日位前になって 「オッケーの返信しませんでしたっけ?」 というメールが。私達の存在なんてそんなもんです。 ダウンタウンの劇場だったので機材を搬入する場所を聞いたら 「やぁ、彼らのツアーバスが場所占領してるでしょうね~、そのへんで適当によろしく」 私達の存在なんて… 案の定搬入口にはすっごいツアーバスが止まっていました。しかも観光バスくらいのが4台!何人おんねん、このバンド!? 私達のちんけなミニヴァンが駐車できる隙間もなかったので路肩で機材をおろし、ブライアンだけ駐車場を探しに。それがツーソンで一番汚らしい路で、機材を置くのも嫌だったなあ。 裏口を入るとすぐステージの袖。おっさんが数人サウンドチェックしていました。うわ、すごい素敵な会場! おっさん達はバンドの人みたいだけど、ジョージさんはいませんでした。サウンドチェックって適当に音出しておしまい、って感じだけど、彼らはちゃんと数曲やって、ソロまで弾いてました。練習も兼ねてた感じです。 なかなか終わらなかったので劇場をうろちょろしてたら、年配のセキュリティーのおじいさんが二人ロビーで座って談笑していました。もちろんまだ鍵がかかってる入り口を誰かがガンガンノックしてたのですが 「遠すぎるわな」 と言って立とうともしません。私がそっちのトイレのほうに行こうとすると、 「ついでに開けてやって」 と言ってました。好きだな~、こういうやる気のない人。 暇だったのでしばらくお話してたのですが、いろいろ劇場ゴシップが聞けて楽しかった。 「ドワイト・ヨーカム(カントリーの人)の時はサウンドが酷くてな~、客席からブーイングが起こったので3曲目くらいで中断してサウンドをやり直しさせて、また最初からはじめたんだ」 こういう裏話大好き。 「一曲、セキュリティーの俺達に捧げろよ~、がはは。」 私達のサウンドチェック。普段小さいアンプを使ってるのですが、さすがに劇場であれはないだろうと思い(でかいシステムに繋げるのだからパワーはそんなに関係ないけど、見た目がね 笑)代々猫の爪とぎになってるでかい奴を持っていきました。変な雑音がしてヒヤッとしたけど、なんとかパス。こういう会場ってドラムの金属音がズレて返ってきて、それだけ聞いてると狂ったメトロノームみたいで混乱する! さて、おなかが空いたけど。さっきケータリングの人達がご馳走を運び込むのを見たけど私達が手をつけて良いのかわからない。私達の楽屋もあるのか、無いのか誰も何も言ってくれない。なので外へ出て、サブウェイへ。店員の兄ちゃんもバンドをやってるそうです。 お客さんもちらほら集まり、 いよいよ緊張の出番。でもこういう場所って、強烈な照明で最初の4列くらいしか顔見えないんだよね。なんか、ぽか~んとしてましたね、みんな(笑)。でも私達の常連さんも来てくれていて、名前を叫んだり曲にあわせて歌ってくれたりしてる声が聞こえて嬉しかったです。 あっという間に30分4曲は過ぎました。CDを持ってロビーに行くと思ったより多くの私達の常連が来て声をかけてくれました。そうでない人達も沢山声をかけてくれました。ブライアンは緊張でおなかをこわしたのですが、トイレまでの15メートルで何人もの人達に声をかけられ、とんだ惨事になりそうだったと後で言っていました。 そしてメインのステージが始まりました。出番も終わり、ほっとして、ここから極上社会科見学が始まります。 プロのステージを横から後ろから見る。バンド同士でどんな合図をしてるのか、 裏方はどんな感じで彼らをサポートしてるのか。いつかメインアクトになりたい。こういう場で緊張しないで、飲まれないようになりたい。格闘技選手は対戦相手が決まるとまず大きな相手をイメージで小さく、小さくしていく事からはじめると言いますが、私もこの会場と(規模で言えば小さめですが)、緊張感と、多くのお客さんの目を圧縮して、空気みたいに薄めて飲み込んでしまうことがいつかできるのかな。 彼らはストーンズの前座(古い人間の言い方だなあ 笑)も勤めたそうですが、なるほど、ジョージさんはミックジャガーを彷彿とさせる。飄々としていて、腰に手をあてて胸を張ったりしてね。あの頃のロッカーは多かれ少なかれ影響されたんでしょうね。 設備もすごかった。ライトなども自前らしい。クレート箱にはヴィトンかと見まごうようなGTDのロゴがプリントされていました。破天荒なロッカーかと思ったけど、結構お金貯めてたんだね(笑)。 お付の人がサングラスや星条旗のバンダナ、ギタースライドなど細々した雑貨を載せたトレーを並べたり、(これも自前ロゴ入りの)ミニ冷蔵庫から最初のアンコール前には水、次はグレープフルーツジュースをだして注いでいましたが、こんな細かい事も指示されてるのかな。ジョージさんは手もつけませんでしたが。 スターになった時の参考にします(笑) 関係者バッジステッカー。布製で、良いお土産になった~