セピア色の世界の中で
つきぬけるような青空彼女の事を思い出す時ボクはいつも決まってこんな空の下にいた金属音のような子供の声どこからか響く風鈴の音蝉はうるさいくらいに自己主張を繰り返していた息を切らして緑風の中を抜け丘の上のその家を目指すこんな風に世界は永遠に続くものだと信じていた今日も暑くなりそうだねそう言って縁側で微笑む彼女は穏やかにボクを見つめていたやがてゆるやかに変わり始めた世界でまるで夢から覚めたかのようにそこにあった永遠は姿を消したあの頃と同じ空の下こみ上げる郷愁と共にボクは歌を口ずさむ同じリズムで世界は回り日々は静かに色褪せるいつか届くと信じていた空は手のひらの向こうに広がっていた淡い空の中に淡い雲が浮かびボクの中の世界を揺り動かすそんなセピア色の世界の中で彼女は今日も微笑んでいた