君の腕と雪とマグカップ
ふだんはいつもからっぽの腕が君の腕につかまるはじめて歩く街のはじめて歩く道雨の中 狭い道障害物 人の流れさまざまな物が君と私の腕を引き離す君の温もりが少し遠ざかるけれど君は少し前からほんのすこし歩みを緩めて私の半歩前まで近づいて顎で黙って自分の腕を示すその先には君の腕が丸い形を作って私の右手が滑り込むのを待つその姿はとてもあたたかで見上げる顔のその向こうはるか上から降る雨がいつの間にか綿毛のような雪になるけれど寒ささえも感じないほどに安堵する体温で凍える寒い夜をあたためる君と その腕あたたかい飲み物をいっぱいに満たして悴んだ心のなかまで温める大きなマグカップの取っ手にも似ていとしくて触れずにはいられない君は心をあたためる飲み物寒い冬の一日が君がいるだけであたたかくなる離れたって 平気君の腕はいつだって心のなかあたたかさを変えずにいつもそこにあるから