疑惑
ダン・セラフィニ。今年、我々ファンの期待を裏切りまくり、チームを真っ先に解雇された男である。シーズン途中から米球界に復帰していたのだが、先日、50日間の出場停止処分を食らった。理由は、薬物規定違反だそうだ。日本にいた時に処方された薬が原因だと本人は語っているが、真相はどうなのか。薬物疑惑というと、もっと大変な人物がいる。今季、通算762本塁打の記録を更新した男、バリー・ボンズ。ここ数年、彼は薬物疑惑の渦中にいたわけだが、遂に米連邦大陪審が起訴したのだ。ボンズが栄養補助食品会社「バルコ」製のステロイドなどを使用し始めたのは、1998年頃とされる。当時、MLBでは明確な規定がなかったものの、その後、2002年には禁止された。問題となっているのは、その翌年。同大陪審でステロイドの使用について、偽証があったというのだ。当時、ボンズは故意に薬物使用したことはないと証言していたのだが、検察側は、それを覆す明らかな証拠があると主張している。この起訴を受け、様々な方面から反響があった。まず、ホワイトハウスの報道官が「ブッシュ大統領は非常に落胆している」と超異例の声明文を出した。更に、米陸連の評議員団がマリオン・ジョーンズの例を出し、ボンズの記録抹消をMLBに勧告。逆風、吹きまくり。現在、彼はジャイアンツからFA宣言し、他球団に移籍して現役続行の道を探っているが、これだけの疑惑を持った選手をどこが雇ってくれるのか。今は、育毛剤でさえ薬物違反となる世の中。ボンズが引退に追い込まれる可能性は高そうだ。因みに、この疑惑については、以前からサンフランシスコ・クロニクル紙の記者が取材を進めているのだが、今週、その著書『Game of Shadows: Barry Bonds,BALCO and the Steroids Scandal That Rocked Professional Sports』の映画化権を米最大のケーブル局・HBOが取得したというニュースも流れてきた。監督はロン・シェルトン。『ティン・カップ』『さよならゲーム』『タイ・カップ』『ハード・プレイ』など、スポーツ映画でもよく知られている監督だ。そもそも、こうしたドーピングの類は、かつての社会主義国圏で盛んだった印象が強い。薬物ドーピング、血液ドーピング、中には、中絶ドーピングなんて手段もあったほど。メキシコ五輪女子体操団体で金メダルを獲得した旧ソ連の代表メンバーの1人、オルガ・コワレンコ(旧姓カラセーワ)は、男性ホルモンの分泌が活発になるからと、妊娠中絶を命令されていたと告白している。父親になる予定だったボーイフレンドの無念は計り知れないものがある。そういえば、1990年代の陸上界を席捲した馬軍団。あいつらは今、何をしているのだろう。軍隊のような選手管理法。1日40km/hにも及ぶ過酷な練習。中国4000年の極意が詰まった特製スープ。そして、世界新記録を連発する選手たち。当時、馬俊仁コーチの指導法は大きな話題を呼んだ。……選手たちの造反も含めて。しかし、2000年シドニー五輪の開幕直前、馬軍団の6名を含む計27選手が、国歌体育総局の指令で、急きょ参加を取り止めた。持久力向上に効果があるとされるエリスロポエチン(EPO)の検査で、ヘモグロビン数値が異常だったためと言われている。ところが、この検査を馬コーチは「不適切」と断じる。選手たちは高地トレーニングから帰ってきたばかりで、ヘモグロビン数値が高いのは当然だというのだ。その主張が受け入れられなかった彼は、失意のうちに陸上界を引退。現在は、なんとチベット犬の繁殖センターを経営。つまり、犬のブリーダーになっているんだと。「コーチ業への意欲はもうない。 人間を教えるよりも犬を訓練する方がいい」だって。Please crick here !!