筒井康隆著「残像に口紅を」を読んだ
3年程前、筒井康隆著「残像に口紅を」の単行本(中央公論社)を買った。文庫本より活字が大きいだろうと思って買ったのだが、1989年発刊なので、活字は大きくなかった。なので、電車の中や病院の待合室で、メガネ無しで読む事はできずそのままになっていた。で、ここに来て、コンピュータのセットアップやバックアップで、待ち時間が多くなったので、その間に残りを読み進めることにした。この本は、言葉(文字・音)がひとつずつ消えていき、その言葉を持つ「物」も同時に消えていく、という内容。最初は「あ」と「ぱ」が消えて、書棚から、この音を含む作者名と書名の本が消える。そして、次には、自分の娘まで消えていく。書名の「残像に口紅を」は、消えた娘に口紅を塗ってあげる、ということから来たもの。で、作者特有の漢字使いなのか、私の知識不足なのか、やたらと読めない漢字が出てくる。脚立にルビを振っているのに(他に読み方がないのに)、それ以上になじみの無い漢字にルビが無い。そして、読んでいくうちに、矛盾を感じるようになった。言葉(文字・音)が消えると、その音を持つ物体も消えるのだが、消え方にえこひいきというか、自己都合があるように思えるのだ。例えば、地球の「ち」は早い段階で消えているのだが、地球は存在している。ま、地球がなくなったら、小説の舞台もなくなるのだから、それを言っちゃぁお終めよ、なのだろうが。