非選抜アイドル
ツーことで、今日は久々の「読書案内」で仲谷明香「非選抜アイドル」(小学館101新書)です。この本は今月2日に発売されて、その日のうちに書店に行ったら「届いていない」と言われ、数日後に行くと「売り切れです」と言われ、ネットで見てみるとあちこちで「手に入らない」という声が上がっており、先週末から3刷が書店に並び始めたようですが、小さな書店ではほとんど入荷してないようで、ようやく昨日出かけたついでに大きめの書店に行ったら20冊近く平積みになっていました。けど、特にPOPがついてるわけでもないのでこのまま気づかれずに売れ残ったりしないかと要らぬ心配しちゃってます((+_+)) ちなみにこれまでは発行部数の多くない本とかでも発売当日に手に入らないことってほとんどなく、半月もまたされるってのが初めてで、こういうのが地方では当たり前で、東京は恵まれているんだって感じました。で、早速読んでみたんですが、ケッコウ読みやすいのに、ハッとさせられるところもケッコウありましたね。自叙伝的なものなので「あらすじ」というか、アウトラインは軽めに(^^ゞ 仲谷明香は1991年10月15日生まれの二十歳。岩手で生まれたものの7歳の時に両親が離婚して母親と一緒に母親の実家のある千葉に移り住む。この環境変化に馴染めずにアニメ好きの引っ込み思案の少女となり、中学のころには不登校気味になっていた。中学2年の頃に声優の養成学校に通いだすが、母子家庭でレッスン料が払えずに半年で辞めることになる。ところが、同じクラスの自分と同じように引っ込み思案で目立たない女の子がアイドルになり、しかもデビューシングルでセンターに立ってることにビックリしてあれこれ調べてみた。そのクラスメイト、前田敦子が所属するAKB48はアイドルになるのが目的でなく、その先の夢に向かって進むための場所であり、それゆえ、レッスン料なしで声優の勉強もできることを知ってオーディションを受けることにする。だが、アイドルになる気もなく受験したため、黒い服に眼鏡というアイドルとしてあり得ない格好で行ったものの、声優になりたいという明確な夢があったからか合格してしまう。そしてAKB48の一員となったが、何か売りがあるわけでなく、かといってアイドルとして必須である「人気集め」ができなかった仲谷が取った行動とは…正直、AKB48に詳しい人が読むと物足りなく感じるかもしれないが、AKB48についてあまり知らない人にとってはケッコウ面白い読み物になっている。もちろん、ケッコウあからさまなことは書いてるものの、書かれていない闇もあるはずだが、著者の筆致のせいかのほほんと受け入れて触れていないことなど気にせずに一気に読める。何箇所か時系列的に「勘違い」してる箇所もあったが、説明の簡素化のためにそういう風にしたのかなって?まぁ、誰だって記憶の齟齬ってありますからね(^^ゞ<AX2009の「初日」と組閣の関係 でも、そういうのは抜きにしてもなるほどと感じることがいくつかあった。1つ目はメンバー同士の関係です。女性が集団になれば仲良しグループができたり、対立だのいじめだのがあるだろうと誰しもが思いますが、誰かの足を引っ張ってしまうと却って自分の評価を下げてしまうらしい。これはチームでパフォーマンスする際に誰か一人がミスするとチーム全体の質が劣ってると見做され、そのチームの一員である自分はもちろん、AKB48全体の質が悪いと思い込まれるので、むしろ誰一人劣ったメンバーなどいないと見せないとイケないんです。このため、巧いメンバーが下手なメンバーに教えて全体のレベルを上げるのが当たり前で、誰かの足を引っ張るなんてとんでもない。もちろん、激しい競争に曝されているものの、その競争の場面以外では敢えて競争する必要などないし、そんなパワーも気力も残っていない。それほど一生懸命だってことらしい。もう一つは競争に臨む態度です。著者は選抜に入れない「非選抜アイドル」だけど、選抜アイドルは「非選抜アイドル」がいるからこそ光り輝くのだと言う。多くの「非選抜アイドル」を凌駕するから選抜に入れるのであり、その選抜の中でセンターポジションにいられるのはまっとうな勝負に勝ったからだろう。勝てば官軍だが、負けてもそれでお終いじゃない。選抜メンバーが輝くのは、正々堂々と戦って華々しく散っていく敗者がいるからだという。それも敗者のレベルが高ければ高いほど勝者が輝く。つまり、選抜メンバーをより強く輝かせるためにも「非選抜アイドル」が懸命にスキルアップして行かないとイケなくて「非選抜アイドル」がヘボだったら選抜メンバーもくすんでしまう。強い奴を倒したから強いのであり、弱い奴を倒しても強いとは言えないでしょ?そういう選抜メンバーを輝かせる存在になることが自分を輝かせることになり、自分の夢に通じる道を歩むことになるのだろう。判官贔屓という言葉があるが、勝って当たり前のものが勝っても面白くもないが、勝つか負けるかわからない手に汗握る状況で勝てば興奮するし、負けても次こそはと奮起するだろう。つまり、勝者にとって必要なのは「良き敗者」なのかも。「良き敗者」であれば時には勝者以上に称えられることもある。…ってことは今のプロ野球がつまらないのは…(^^ゞ<おひおひ!!