摩天楼のホタル
昨日は、ケムケムの話を書いたがこの季節、庭にやってくるのは迷惑な虫ばかりではない。実は『ホタル』がやってくるのである。マンハッタンに引っ越してきたばかりのころは大きな公園の近所に住んでいたのでホタルをよく見かけた。それでぼんやりと公園に水場があるのだなと考えていた。その後、数回の引越しを繰り返しスタッテン島というニューヨーク市内の大きな島の庭付き一軒家を借りることになった。そこにも毎年ホタルが大発生し夏の夜の車のドライブは満天の星の中を進むようでとても幻想的だった。それでも、少し離れた場所の公園の水場からホタルがやってくるのかと、ぼんやり考えていたのだ。数年スタッテン島に住んだ後マンハッタンに戻り今の建物に移ってきたのだがビルの谷間の我が家の庭をふわふわとホタルが飛び交うのを見たときにこれは何かおかしいと、やっと気づいた。一番近場の公園から我が家にやってくるには高いビルが建ち並ぶ、オフィス街を横切らなくてはならないのだ。当然のことながら、ビル街のど真ん中の中庭である我が家には水場など存在しない。実は、我が家の庭に住んでいるのは『陸生』のホタル、つまり幼虫期を土の中で過ごすホタルだったのだ。ものの本によると、世界中に2,000種類いるといわれるホタルの中で水生のものは、たった6種類。そして実は、日本に棲息しているホタルも約45種類中、水生ホタルはたった3種類。(昆虫学者によっては2種類という説もある。)つまり、水の中で幼虫期を過ごすホタルのほうが世界では圧倒的に珍しいホタルだったのだ。今は少なくなったとはいえ、水生ホタルがあたりまえの日本はやはり、豊かな水の国なのだろう。ちなみに陸生ホタルの幼虫の大好物はナメクジ。我が家の庭でがんばって増えて欲しいものである。ホタルの写真もないので、おなかがテカる怪獣をどうぞ。お知らせ: ぷろとんが、こっそり読書室始めました。 本がお好きな方は、こっそりどうぞ。