『踊る大紐育(ニューヨーク)』On The Town
"New York, New York, a helluva town."の歌だけで楽しくなる、ジーン・ケリー~フランク・シナトラ~ジュルス・マンシンの3人組が活躍するMGMミュージカル。3人の水兵が24時間の休暇を貰い、それぞれガールフレンドを見つけ、騒動があって、そして休暇が終わる、ただそれだけのストーリーであるが、佳曲とダンスのスピーディーな展開で飽きることのない傑作である。非番となり早朝ニューヨークに上陸した3人の水兵、ゲイビー(ジーン・ケリー)、チップ(フランク・シナトラ)、オジー(ジュルス・マンシン)は早速1日楽しく過ごすためのパートナー探しに出かける。地下鉄車内で"ミス地下鉄"のポスターを見たゲイビーは一目惚れ。たまたま駅でミス地下鉄ことアイビー(ヴェラ・エレン)を見つけ、後を追うが見失ってしまう。ゲイビーのアイビー探しに付き合うチップとオジーはその途中でそれぞれパートナーを得る。ゲイビーもようやくアイビーを見つけ、3組のカップルで夜のミュージック・ホールに繰り出すのだが・・・ とにかくスピーディーで無駄がない。ストーリー的にはやはりケリーとシナトラが共演した『錨を上げて』に似ているが、こちらの方がテンポ良く、ダンスシーンも圧巻だ。(とは言っても『錨を上げて』も好きなのだが) (左)さすがのアン・ミラー/(右)ベティ・ギャレットそして本作の特徴は、初めて現地ロケを大々的に取り入れた点である。街中で3人が歌う遥か後ろに野次馬が鈴なりになっていて、臨場感があるが、摩天楼の上からの景色や夜のコニー・アイランドなど風景も楽しめる。(マンシンは高所恐怖症とまでは行かなくとも高いところが苦手だったらしく、高層ビルの屋上のシーンでは心なしか不安げ。ビルの端を避けているようだ。)水兵役3人は『私を野球に連れてって』の余勢を買っての再登場であり、相変わらず楽しい。当時ケリー37歳、シナトラとマンシンが34歳。ケリーがダンス、シナトラが歌、マンシンがお笑いと、役割分担もハッキリしている。ダンスのシーンでは"先史時代人"が楽しいが、迫力があるのは"A Day In New York Ballet"。このシーンにはキャロル・ヘイニーが出ている。 (左)クレジットはなかったがキャロル・ヘイニーのデビュー作でもある。公開から60年経とうとしているが、十分楽しめる作品。多少の古臭さは許容範囲だ。主演ケリーはじめほとんどが亡くなっているが、チップを追い回すブランヒルド役のベティ・ギャレットは未だ健在(88歳!)で、今年も何がしかの映画に出ているらしい。ブランヒルドのルームメイト役アリス・ピアースの珍演も見もの。 ミュージカルは楽しくなくちゃ。監督:ジーン・ケリー/スタンリー・ドーネン 製作:アーサー・フリード 脚本:アドルフ・グリーン/ベティ・コムデン 撮影:ハロルド・ロッソン 音楽監督:ロジャー・イーデンス/レニー・ヘイトン 1949年・アメリカ / 98分 / 評価:4.0点 / 子供:○