ミゼラブルだけが僕を確定させてくれていた
実は未だに僕がここにいるのを信じられない節がある。僕は生まれてからずっとあの街にいた。だからこうして半径1キロ圏内にすら知らない道がある今の状態がどうしようもなく不思議だ。そして、あれだけ僕の知り合いがここを受験しておきながら、誰も僕の知り合いが受かっていないことも信じがたい。僕よりも遥かに優れていた彼ら。僕は彼らと共にここで学ぶために頑張ってきたというのに。 これまではホームだった。ここでは一転、僕はアウェイの存在となる。何をするにも地元高校、地元トーク、地元仲間、地元繋がり…。まったくもって新鮮だった。そうして、僕はこれまで如何にあちら側の人間であったかを理解したのだった。 ここでの生活はぼちぼち楽しい。部活には4コ入った。卒業までいくつもつかは分からない。これまで僕は常に何物かに迫られてきた。いつも逃げ続け、走り続けた。親だったり、時間だったり。ここでは僕を制約するものが何もない。僕は資本の尽きる限り自由である。だからこそ、今の僕は宙に浮いている。"自分がここにいる"と確信できるのは、居場所があることでもなく、友達が多いことでもなく、成績が良いことでもない。迫り来る何物かから逃げているその瞬間こそが、僕にとって"存在している"ことを約束してくれる。だから僕は常に自分を追いつめているようにしている。例えば今、本日期限のレポートをサボっているように。Wolfgang Gartner - Clap (Original Mix)Mental Words - izmizm