タケの2008ハワイアイアンマンレポートVOL..4
アローハ! take@kona ■10月11日(土) RACE DAYレース終わりました。太陽に焼き尽くされ、コナウインドに打ちのめされ、アイアンマンハワイという魔物に心身ともにボロボロにされた一日でした。1992年の初ハワイのあと、10回ハワイを経験しましたが、今回が最も厳しいレースになりました。 レースコンディションだけなら、過去もっと暑くて、コナウインドが吹き荒れた大会はありましたが、自分のコンディションが崩れ,辛く厳しい長い、長い一日になりました。それでも完走だけはという、気持ちだけが、自分の体をプッシュし、なんとか11回目のゴールをきることができました。日本から応援やコメントいただいた方へ心から感謝します。ありがとうございました。また、今からが新しいスタートです。------------------------------------------------------------------------------起床3時30分。昨日は22時過ぎにベットに入ったが、珍しく全然眠れず。それでもいつかはと眠くなるかと、じっとしてたが、全然眠くならない。結局、24:15分迄は時計チェックしたので、そのあたりに寝たのだろう。(いつもの時間だぜ、おいおい)朝飯は、アルファ米の五目おこわ+納豆+玉子+味噌汁。ナンバリング、バイクセッティングはAM4:45から。外には早くも行列ができている。先にスペシャルフーズ預託後、ナンバリングしてからバイクセッティング。まだ真っ暗なので、ボランティアがヘルプにつく。懐中電灯もあり、完璧。バイクチェックイン後は部屋で待機。ストレッチやこんな時はやはり、キンカメが圧倒的に便利だ。プロカテゴリーのカワハラPは、6:45とエイジGより15分速いスターとなので、6:20にはホテルをでる。お互い健闘を祈る。■スイム俺は、6:40にホテルを出てスイムエリアへ向かう。プレスイムバックを預け、6:50に入水。沖合い200~300m先から一斉フローティングスタート。大砲ズドーンという合図で、さあスタート。スイムは3800m、沖合いの船を折り返すコース。途中にオレンジのブイを目安に泳ぐが、最短距離かどうかは微妙。流れが右に右にとあり、いつの間にかコースの近くに寄せられている。スイムで順位をかせごうなんて、思っていないので、きれいな海を楽しみながら、TI(トータルイマ-ジョン)を意識して、ゆっくり泳ぐ。タイムはよくないが、ガンガン泳がないので、楽に泳げる。いつもとおり、折り返してからが長い、長い。ようやく、スイムゴールが見えてきたらがこれまた、長い。ところどころ、冷たい海流が体を通り過ぎ、ドキっとする。 時計をみると、8:19。 やっぱりいつもの時間。■バイクバイクトランジットは、通常のタイムを競うレースとは異なり、ハワイは俺はゆっくり着替える。小便もして、ハートレートつけて、シューズもはいて、さあバイクへ。テント出てから自分のバイクまでが遠い遠い。大回りでぐるっと回る。下は人工芝が引いてあるので走り(歩き)安い。 バイク置場は、もう俺のバイクだけ、ポツンと1台。間違えることなんかない。さあ、バイクへGO! スタートして10kmほどコナ周回でそれから、クイーンKに出る。ハヴィの左折後は、ヒロの折り返しまで一直線。折り返しは95km地点。前半は風がなく、じわじわと太陽が容赦なく体に照りつける。心配なのは、ここ数年ロングのレースになると、補給食が受付けなる時があるのだ。これだけが不安材料。 バイク序盤は押さえて後半にジリジリ追い上げるつもりだった。 ハヴィからヒロまでの約40kmは、ダラダラ登りと久々に吹き荒れたコナウインドで一気にペースダウン、体力を奪われる。折り返しでスペシャルエイドで、ゼリー飲料をとり補給。冷たいゼリーは美味しいが、熱であったまった暖かいゼリーは、さすがにオエェって感じ。 下りは外人選手はガンガン踏んでかっ飛んで行く。俺も体重は軽い方じゃないが、それでも抜かれる。100km地点ぐらいから、変なゲップが何度も出始め、だんだん補給ボトルに入れたピットインを受け付けなくなってきて、ムカムカしてくる。やばい兆候だ、ゲーターレードももう気持ち悪い。しばらくして、コーラ飲んだとたん、我慢できなく、戻してしまう。途中からは胃液が何度も上がってきて、ペースダウン。なんとかバイクだけは、乗り切りランに移りたい。終盤は行きの登りで抜いた選手ほとんどに抜き返され、途中から低血糖、ハンガーノック状態で意識朦朧としてふらふら蛇行しはじめ、抜かれる選手から、Taku care!、Aer you OK ? などと、声掛けられる。もうこの状態ではサイクリング状態で、まるで名栗バイクを追えてセブンイレブンから自宅に戻るようなのろのろで、DHポジションも取れないくらいに・・・。もう、リタイアだけはしないことだけを目標に走りつづける。コナの街に近づくと、既にトップ選手はランパートでエナジーラボを折り返している。トップ選手はアルサルタンでもノーマンでもない、ゼッケンNO2のアレクサンダーという選手だ。凄いスピードで走っている、激走するカワハラPに声をかけ、自分も頑張る。 バイク終了地点でもウズキさんはじめ日本人にも声掛けられる(ありがとうございます!)バイク降りて、またまた長いトランジットロードをひらすらペタペタはや歩き(腰が痛くて走れない)、テントでバイクジャージからトライパンツに履き替えランへ。 なんと、6時間半かかった、長いバイク。■ランここからいつものように追い上げれば、11時間前後でゴールできるのだが、今日はまるでペースが上がらない。空腹感はあるのだが、何も受けつけなくなり、ハンガーノックと嘔吐感で脚が前に出ない。1マイルがこんなに遠く感じるのは初めてだ。途中、暑さもあり、再び意識が朦朧としてきて、蛇行してしまう。途中、折り返しすれ違う日本人の選手のほとんどが、「ナカミチさん、頑張れ!」「ナカミチさん、どうしたの?」「ナカミチさん大丈夫?」など、皆声掛けてくれる。俺は手を軽くあげるか、目で挨拶するのが精一杯。本当に申し訳ない。沿道ではマミコやホスピの津川さん、グッドウィルの武藤さんはじめ、他の選手の応援の方や付添いの方が声かけてくれる。こんなに声かけてもらったのは今までなかったかも?それでもエイドとエイドの間だけは歩かないようにしようと、ひたすら腕をふる。1km10分以上かかっている。このままだと、5~6時間はかかってしまう。途中何度も完走できるか、と時計を逆算する。自分では走っているつもりでも、歩いている選手に抜かれてしまう。自分が情けない。 クイーンKに入り、20km地点では、再び激しい嘔吐が俺を襲う。何も補給していないので、胃液しか出てこない。最後は胃液に真っ赤な血が混じりはじめ、胃が痙攣してしまう。 途中、何度も意識がなくなりかけるが、這ってでも、最終走者でもいい、どんなことをしてでもいい、コナの街へ帰ってくるのだという意識が、少しづつだが、俺の体を動かしている。日が暮れて、街頭も何一つない真っ暗な溶岩台地をひたすた、ペタペタ走る(というより走っているつもり)、月明かりだけがほんのり道路を照らしている。上を見ると、まさに満月の夜だ。そう、アイアンマンは、当初、10月の満月に一番近い土曜日に行われるのだ。暗くなり、30km過ぎてからは走れなくなってきた。おとといバイクのフロントギアでザクっと踵を深く切ってしまい、痛みもひどくなってきた。歩いているほうが多くなっていた。エネルギー枯渇状態でどうにも体がいうことをきかない。途中、いろいろな想いが脳裏をよぎる。調子がよく頑張っているときは、前へ前へと無心で走っているが、今日は違った。今日はまさに自分自身との闘いであり、極限状態での自分への挑戦だった。すれ違う選手の表情は皆真剣だ。皆遠く、コナのゴールを見つめている。何がこの選手達をここまで駆り立てるのだろう。何故こんな辛い思いをして迄、真っ暗で長いこの道をひたすら走るのだろう? 何がここまで俺をゴールを目指させるのだろう?もう何十人、いや何百人に抜かれただろう。ようやくコナの街明かりが見えてきた。いつもならラストスパートだが、今日は、完走だけを目指す。クイーンKを右折して下ると残り約1マイル。街の人々や、レースを終えた選手が沿道で応援してくれる。みな、こんなヨレヨレの俺をみて、「グッジョブ!」「キープゴーイン!」を声を掛けてくれる。ラスト1マイルで別人のように脚が動きはじめる。不思議だ。アリイドライブの最後の直線では、まるで優勝者のような盛り上がりでアナウンサーと観客の声援を受けながら、ゆっくりとゴール光の中に吸い込まれていった。ランは、なんと6時間以上かかり、トータルタイムも14時間16分だった。 ■感走今回、11回目のコナ。自分にとっては10回を区切りにして、今回が新しいスタートの大会だった。しかも30周年記念大会。だが、待っていたのは、ハワイアイアンマンの洗礼だった。今までで一番、長く、辛い、厳しいレース。心身ともにずたずたになった。顔では笑っているけど、心は悔しさと自分への屈辱感一杯だ。でも今日は、これが俺の実力。現実を受け止めよう。そして、またゴールを切った、瞬間から、スタートだ。今回のことで、今までのトレーニングや調整方法、仕事、睡眠等々、棚卸をして、来年につなげよう。そんな、レースだったが、得たものは沢山ある。まずは、今回涙がでるほどうれしかったのは、こんな自分になんとも多くの選手、沿道の応援の方々が声を掛けてくれたことだ。年齢に関係なく本当に多くの方が、声を掛けてくれた。本当にありがとうございました。こんなことは、トライアスロンだからできること、本当に自分は素晴らしい仲間を持ち、幸せだ。またトライアスロンをやっていてよかったと実感。次に、最後まであきらめなかったこと。厳しいコンディションの中、リタイアという文字は脳裏に浮かばなかった。這ってでも完走するという気持ち、ここまで来たのだからという気持ち、そして格好もプライドをかなぐり捨て誰のために走っているのかという気持ちが自分をゴールにひっぱてくれた。そして今回、今まで以上に自分に対し強くなれることと他人に対しやさしくなれると思う。また、近くで一緒に練習している仲間や自分を知ってくれる仲間は、今回の自分のレースが逆にいい刺激となり、参考になり、近い存在になってうれればと思う次第。そしてもうひとつ、今回のようなレースをして本当にいい経験になったこと。毎回コンスタントにいいレースができれば言うことないが、長いトライアスロン人生、このようなこともあるということが身にしみてわかった。時間を掛けて走るする選手も本当に心身ともに強くなければ、完走できないということだ。まさにこれこそがトライアスロンの醍醐味、やめられない!では、ながながとすみませんでした。これからもよろしくお願いします。帰国は14日の火曜日です。