周防 柳著 『蘇我の娘の古事記(ふることぶみ)』
☆『古事記』の作者は誰だ?壬甲の乱を舞台に、古代史最大の謎に挑む、本年度いち押しの本はこれだ! 現代語訳『古事記』より遥かに面白い力作。――角川春樹許されぬ恋、王位継承の争い……激動の時代をみずみずしく描く、書き下ろし長篇小説! ☆新聞の書評で面白そうだったので読みましたが、古代史ファンタジーみたいな感じでした。歴史なんて勝者が好きなように書き残しているから、どっちが善か悪かなんて分かったものではない。「歴史とは、ほろびたものの歴史だと、私は思うのよ」という言葉が出てくるように、645年乙巳の変(このごろ大化の改新とはいわないらしい)では、蘇我蝦夷・入鹿のことを悪人ではないように書き(中大兄や鎌足の方が性格悪そう)、壬申の乱では大友皇子よりも大海人皇子の方をずる賢い人と描いたりしています。歌舞伎などでは蝦夷・入鹿が極悪人として登場するのがあって、あまりに一方的で少々気の毒に思っていたので、悪人ではなく描いているのがよかったです。