光に透けて輝く影の色
昨年末から今年にかけて出会いが多かった水晶があります。現在のところ総勢4個なので、数だけで言えば少数派なんですが、それまで一個も持っていなかったどころか、そういう国があるのも知らなかったところの石が一気に4個ですから、大躍進!と言ってもいいでしょう。すでにこの雑記にも一個登場している石……マラウィ産水晶です。マラウィ産水晶との出会いは、知り合いの石好きさんに見せていただいた一見ツヤ黒、しかし光に透かすとインクブルーという、不思議で美しい石でした。もちろん、そういう石に出会うことができればぜひゲットしたいですが、私のところにいるマラウィの水晶は1つをのぞいて3つはスモーキー。スモーキーばかりなぜ買うかと言えば……なんといっても透明感のすばらしさ。スモーキーと言えば、色のイメージを陰陽に分けるとすれば、「陰」のイメージが強いのではないでしょうか。水晶だけで見てもアメシストやシトリンに比べれば、ちょっと地味な印象があります。でも、マラウィ産のスモーキーは、スモーキーにもかかわらず、まるで輝いているようです。以前にご紹介したマラウィ産水晶は、錐面が5つしかない変わり水晶でしたが、今回の水晶はルチル入り。ルチル……というよりはちょっと枯れ草っぽいですが(笑)。写真に撮ってみてわかったのは、この石は一見スモーキーですが、どうやらクリアな層で覆われているようです。ルチルの他には、エジリンもちょっぴり入っています。スモーキーの色合いにもいろいろありますが、私の見たところでは、わずかに黄色みを帯びているかモノクロ系の色味が多いブラジル産よりは、マダガスカルに近いようです。あるいはその透明感もあいまって、アルプス水晶にも通じるイメージがあるようにも思います。この魅力的なスモーキーを産出するマラウィという国は、アフリカの南部中央にあって、北と北西をタンザニア、東、南、南西をモザンビーク、西をザンビアと接しています。アフリカの地図を見てもらうと、ナイル川のさらに上流に、細長い湖が連なっているのがわかると思います。その一番南の湖の西に沿うように広がる細長い国がマラウィ共和国です。国土面積は118,484平方キロメートル、南北900キロメートル、幅は90キロメートルから161キロメートルほど。北海道と九州を合わせたのとほぼ同じ広さで、国土の5分の1が湖や川です。マラウィとモザンピークの国境となっている細長い湖はその名もマラウィ湖といいます。アフリカの地形を見ると東岸には他にも湖があって、主なものは北からヴィクトリア湖、タンガニーカ湖、マラウィ湖……と湖沼地帯が帯のように連なっています。これは東アフリカのグレートリフトバレー(大地溝帯)とよばれるもので、今も一年に数センチずつ広がっている巨大な大地の裂け目なのです。大地溝帯とは二億数千万年前、大陸大移動が始まった時に地殻変動によってできた大断層のことで、イスラエルの死海から紅海を通ってエチオピアを抜け、タンザニアまで続く東部地溝帯と、ウガンダのアルバート湖からマラウイへと続いてモザンビークからインド洋へ抜ける西部地溝帯からなり、その総延長は7000キロにも及びます。つまり、大地溝帯の地下深くにはマントルの対流が上ってきて、アフリカの大地を東西に引き裂いているのです。今もその他かさを増しつつあるエベレストと同じく、地球が今も蠢き変化し続けているその現場であると言えるでしょう。また、大地溝帯は人類の祖先が誕生した場所としても知られています。人と地球の歴史が交わる場所からやってきた石……そう思うと、まずますこの石が好きになります。