牙を剥く石
久~しぶりに、ヨーロッパの石。スイス・アルプス水晶です。なかなか数を見かけないし、手の届くところにいてくれないんですよね~、ヨーロッパの石。アルプス山脈は、ヒマラヤ山脈とほぼ同じ時期に、同じようなメカニズムでできた山脈。それゆえに「アルプス・ヒマラヤ造山帯」と呼ばれています。でも、産出する水晶は、似ているものもありますが、個人的視点ですけれど、ヒマラヤ(ネパール)はワイルド、アルプス産はクールというイメージがあります。ネパール産は、最近ではかなり見かけるようになり、透明ぴかぴかの石も、割れていたり、かなり渋い変な石も玉石混淆で日本に入ってきます。それに対してアルプス産は、個人的に採掘された入りが出回るのだそうで、おそらく、見つけた石の中から比較的整った石が選ばれているのではないでしょうか。ところが……あるとき見つけたのは、あるぷすらしく「クール」ではなく、だけどいろいろな点でちょっと目を引く石でした。ちょっとガネーシュ・ヒマール産を思わせるずんぐりした結晶が、絡み合うように方向違いでくっついています。そして、ルチル付き。「アルプスで、ルチル入りがあるんだ~!」……と、これがまず注目ポイント。ネパール産で「ルチル入り」と言われているものは、どうも角閃石入りに見えるためヒマラヤの環境ではルチルはないんじゃないかと思っていた頃だったので、「アルプスであるならネパールだって」と期待度アップ。その後、パキスタン産(ぎりぎりヒマラヤの範囲内)のルチル入り水晶や、カイラス産でルチル入りを見かけたので、(ネパールじゃないけど)ヒマラヤにルチルはあるということがわかりました。最近、「ネパール産」といわれたルチルたっぷり水晶を見たのですが(高くて買えなかった)、その直後にそっくりなパキスタン産水晶を見てしまったので、ネパールに(間違いなく)ルチルあり……かどうかは、やや保留。とりあえず、この水晶のルチルは間違いないと思っています。ルチルのようすはパキスタン産にそっくり。もう一つ、目を引いたのは上の写真では後ろに写っている方の結晶です。ちょっと上から写してみました。結晶の中ほどが割れている……感じで、その断面の上下から小さな結晶が伸び、割れ開いた傷の部分をふさごうとしているようにも、石の中程に口が開き、牙を剥いているようにも見えるのです。これはネパール産に劣らないワイルドさ!いわゆる「アルプス水晶らしい」水晶ではないけれど、この「表情」は石好き心をわしづかみ。実を言うと、そのとき店の棚に並んでいたアルプス水晶の中では、いちばん「きれいじゃない」水晶だったんですが……、石の魅力は「きれいなところ」だけではないんですね。