ヒマラヤの裾野
最近ではシチュアン・クォーツと呼ばれていることもある、中国の四川省産水晶です。中には黒いインクルージョンがファントムを作っており、全体が灰色っぽく見えています。シチュアンなどと呼ばなくても、四川省産水晶でいいんじゃないかと思うのですが、アメリカなどでは「Sichuan Quartz]として売られていたりするので、そちらの方から仕入れたり、石のパワーや意味を説明しようとすると、「シチュアン」になってしまうのでしょうか。まあ、私としては「シチュアン=四川省」と覚えておけばいいわけですが。さて、シチュアン・クォーツというと、写真のような灰色っぽい水晶や、↑のような小さめでDT(両錐)、中に、タールとも石墨とも言われる黒いインクルージョン入りの水晶を指すようですが、「四川省産」となると、水晶のバリエーションは豊かです。一般に「中国水晶クラスター」として知られる、透明で細い結晶が林立したクラスターも四川省産の水晶が多いですし、↑のようなアメシス・ヘマタイト入り、エピドート付の水晶も、四川省のMeigu産です。ところで、このアメシスト・ヘマタイト入りエピドート付水晶は、所によっては「ヒマラヤ水晶」として売られています。あちこちで確認したところ、ラベルは「Meigu, Sichuan, China」が多いようで、四川省産はまず間違いないかと思われます。四川省でヒマラヤ?時に透明クラスターまでが「ヒマラヤ水晶」とされることもあるのに、同じ四川省産の今回の写真のような灰色水晶はヒマラヤ水晶とは呼ばれていないようす。よく似たインクルージョンでも、DTタイプのこちらは、チベタンクォーツと呼ばれたりもしています。四川省でヒマラヤでチベットとは、ますます謎。四川省ってどういう位置だったっけか……?というわけで作ってみました、「ヒマラヤ周辺マップ」。こんなヒマなマップを作るのは、私くらいでしょう、きっと。さてさて、問題の四川省は地図の右の方。Meiguも、ちゃんと落とし込んでみました。真ん中あたりに茶色く細長くぼかしてあるのがヒマラヤですから、……「ヒマラヤ水晶!」と言うほど近くないんじゃないでしょうか。一般にヒマラヤ山脈と言った場合にイメージする、一番狭いヒマラヤ山脈の範囲は、西は、ギルギットあるいは、インダス川が大きく曲がっているところ、または、ギルギットに近いナンガ・パルバット山、東はインドの東の端の方でブラマプトラ川が大きく曲がっているところまでとされているようです。今回の地図は、大雑把な概略図ですが、そのあたりはちゃんと反映させています。その地図でこれだけ離れているのですから、やっぱり、ヒマラヤ水晶とは言いがたい……。今回の写真の石、透明クラスターがどのあたりから採れるのかはわかりませんでしたが、四川省そのものが、KURO的にはヒマラヤの範疇外。(海沿いの広東省でも透明クラスターが採れるので、四川省でも東の方では……と想像)では、チベタン・クォーツと呼ばれる点については、どうでしょう。確かに、四川省はチベット自治区のお隣。チベットとは、チベット族が住むところを言うのだと言う説もあって、その範囲は、淡い紫色の部分(チベット族自治区があるところ)。四川省も入っています。これなら、チベタン・クォーツでもいいのかな……と思っていたら、地図中にもマークした「樂山(Lashan)」のラベルが付いた、水晶の中に、単に「チベット産」とだけ記されて売られていた水晶↑にそっくりな水晶があるのを発見。もちろん、水晶の鉱脈は行政区画なんて関係ないですが、「Tibet,China」と書かれていて、自答的に「Tibet=チベット自治区」と思っていると、実は四川省産も混じっているかも。透明クラスターや、アメシス・ヘマタイト入り、エピドート付の水晶をヒマラヤ水晶と呼ぶ件については、私はヒマラヤ外としましたが、この地図を見て、各自ご判断下さい。あ、この地図が、どれくらい広い範囲を表しているかをお忘れ無く。そして……話は写真の石に戻ります。四川省産のあるものはヒマラヤと呼ばれ、またあるものはチベタンと呼ばれ、残ったこのタイプがシチュアン……?しかしながら、おとなり雲南省からもそっくりさんが出ます。さて、コイツは四川省のどのあたりから出たんだろう?そういえば、チベットのカイラス山の下の方からも、黒いインクル入りの水晶が出てたっけ。中国は広すぎて、おまけに残念なフェイク疑惑もあって奥が深いです。