古竜
ロシアのシホテアリン隕石です。全体像ももちろん撮影したんですが、表面の溶けた様子がワイルド……(ホレボレ)と、アップで写してみたら、予想以上にかっこよかったので、こちらを採用。シホテアリン隕石は近年最大の隕石の落下として知られています。時は1974年2月12日午前10時38分。ロシアのタイガ地帯6キロにわたって、106個以上の小さな隕石孔をつくって落下したそうです。落ちた隕石の総重量は約23,000kg。もっともこの重さのものがまとめて落ちたのではなくて、100個以上の隕石孔を作っていることからもわかるように、大小さまざまの破片となって落ちてきたのです。それでも、最大のものは1745kgあったそうです。このシホテアリン隕石は、ミネラルショーなどでよく見かけます。黒くすすけたような小さな塊が、山積みになっていたり。こんな金属の破片を振りまきながら、隕石が落ちてきたのだと思うと、そのときの光景はいかなるものかと想像をたくましくしてしまいます。(隕石落下の様子は、切手になっているそうです)さて、隕石は大きく3つに分けられます。一つは石隕石。最近ビーズでも見かける「サハラ」隕石は石隕石です。もうひとつは鉄隕石。ギベオン、カンポ・デル・シエロ、そしてこのシホテアリンも鉄隕石です。最後は石鉄隕石。鉄隕石に石がまじっているもので、鉄の中にペリドットがはめ込んだように混ざり込んでいるパラサイト隕石やブラピン隕石がこれにあたります。以前はガラス質隕石としてモルダバイトやテクタイトも隕石の仲間に入れられていましたが、最近は隕石衝突の衝撃で溶けて飛び散った地球の岩石などだと考えられているようです。石隕石や鉄隕石などは、成分や構造によってさらに細分化されますが、ややこしいし、ボロが出そうなのでやめておきます(笑)。鉄隕石はその名の通り鉄が主成分ですが、詳しくは鉄とニッケルの合金です。今回しみじみとカメラを向けた、この表面の表情は、隕石が大気圏を毎秒1km~14kmの速度で落下する時の摩擦によってできたものなのだそうです。空を切り裂き、吠え叫び、炎をまとってやってきた宇宙のかけら。今回の写真では、まるで年を経た竜のように見えてきました。鋼の体の内部に炎を宿し、空を翔る、猛々しい竜の最期の姿……。そう考えると、隕石と竜とは、どこか似ているようでもあります。全体像はこんな感じ。