世襲は是か非か
世襲が是か非かは単純ではない。下記の本の内容を紹介する。二世経営者の勝ち残り戦略渡辺一雄著 大陸書房1989年10月14日発行ISBN 4-8033-2369-0世襲型企業につとめているサラリーマンはいくら能力があっても社長になれない。たしかに開かれた会社では力のある人間がだれでも社長になれる。社長になるためにデッドヒートが演じられる。多数派工作のために、かりに、めでたく専務が社長になったとする。一方、敗れた副社長派は左遷されたり出向されたりすることもある。次の社長をめざして権力抗争がはじまる。「社長の息子が社長になる と決まっている会社がうらやましい」ある創業社長は息子を外回りの営業に出した。息子のほうもやる気満々。相手をとくに調査せず商談をまとめたため「社長の息子ということで寛大な処分をした」と思われてはと案じた社長は降格のうえ地方の支店へとばした。赴任先で酒におぼれるという生活を送った。「ご運が悪かったのです」と二世をいさめた。社長が病に倒れたので彼は呼び戻されやがて社長になった。落ち目のときに同情してくれた支店長以下の幹部社員を本社へ呼び厚遇した。彼らは社長派閥をつくって新社長に迎合した。彼ら以外の社員は「なんだ詐欺にかかって 会社に大損を与えた人間ではないか」と新社長をバカにした。迎合する人間とバカにする人間派閥抗争を繰り返した後、その会社は倒産した。幸か不幸か、お前は金持ちの家に生まれてしまった。最初から俺のやっている大日本製糖の社長になるよう決まっているのだ。のんびり学生生活を送ってきたおまえが2,3年会社つとめをよそでしたからといってサラリーマンの苦労がわかったなどと思って社長になったら部下はたまったものではない。そんな考えはさらりと捨てて、俺の跡取りとして社長になれ。その代わり、苦労してきていないのだから人の意見をよく聞いて参考にすることだ。(藤山雷太から藤山愛一郎へ)世襲で社長が決まっていれば社長になるための権力闘争は抑えられる。権力闘争は会社のためによくない。必ずしも世襲が非とは言えない。それでは世襲で社長を決めるとすると社長になるまでの育て方が問題になる。将来社長になる人に失敗させるわけにはいかず大事に育てないといけなくなる。そうなると二代目は自分が優れているように勘違いしがちである。自らは苦労していないと戒める必要がある。謙虚な二代目であれば世襲は是となる。