シブイ色合いの韓国絵本『ふしぎなしろねずみ』
今月の読み聞かせ(小5)は、韓国のむかしばなし『ふしぎなしろねずみ』です。 韓国の絵本にはよく、日本の絵本とも西洋の絵本ともちがう、色合いの美しさがあります。いぶし銀とでもいいましょうか。この絵本も、舞台が屋内や雨降りで、おさえた色調が多く使われていますが、それでいて鮮やかで豪華で印象的です。濃い藍色に金泥色の線で描かれた雨の風景・・・なんてシブイんでしょう。 物語は韓国では「魂ねずみ」と呼ばれる昔話だそうで、昼寝中のおじいさんの鼻の穴(!)から白いねずみが出てきて、石垣の穴にあるお宝を見つけます。ねずみが鼻の穴へ帰ってくるとしばらくしておじいさんは目覚め、「宝物を見つける夢を見た」と言います。 針仕事をやめてねずみの後を追い、一部始終を見ていたおばあさんが、おじいさんを石垣の穴へ連れていくと、 「ここじゃ! おもいだしだぞ!」 --チャン・チョルムン文、ユン・ミスク絵『ふしぎなしろねずみ』かみやにじ訳 そして宝物を掘り出した二人は、幸せに暮らしました。 鼻の穴から出てくるねずみなんて、ちょっと衝撃的ですが、「魂ねずみ」すなわちこのねずみはおじいさんの魂の化身なんですね。ユング心理学によると魂は鳥の姿で表されたりすることがあるそうですが、ここでは小さくて小回りのきくねずみというわけです。 ねずみとなって宝を探し当てたおじいさんもすごいですが、ねずみを見逃さず、助けてやり、宝の在処までずーっとあとをついていったおばあさんも、すばらしい。そして、最後のページで裕福になったおばあさんが、やっぱり針仕事をしていますが、よく見るとその鼻の穴にまたもや白いねずみが描かれています。 人間の精神は眠っているときも、無為に過ごしているのではなく、(起きているときとはまた違った)活動をしているようです。注意をはらっていれば、こんなふうにプラスに働いたりするんですね。