冬から春への小旅行 その3
何だか寒くて眼が覚めて、布団の中に潜りながら、外を見やると、雪が降っていた。春の気配を感じようと出かけたのに、明日は3月なのに、こんな綿帽子の風景に見舞われた。雪の切れ間に町中を散策する。昔の町中の道路は中途半端に狭い。なんだか今の時代にそぐわない、型式が古い機械のようだ。そんな町中を、現世風の「空洞化し資本投下しても回収が虚しい市街化活性化事業」に倣って、建設重機が閑静な町に不似合いな打撃音を出している。寒さと行き場のない虚しさを感じて、ゆっくり風呂につかり、冷酒を黙って飲む。ひとりで飲むと、酔っ払う間もなく、酒を飲んでしまう。飲んでしまった量を見て、酔いを覚える。明日からどんな3月が始まるのだろうか。その町を離れると、まるで、結界から抜け出たように、雪が消えた。