ワイン色の温泉に浸かって来し方行く末を一瞬だけ考える
実に久しぶりに温泉に行く。 温泉の色は葡萄色だ。なんだか自分までも熟成されていくような気にならない訳でもない。ワイン色の浴槽の中をごろごろ回って、一瞬だけ、例年になく足早に過ぎた今年と、来るべき来年の様子が頭に浮かび、かつ消え、かつ浮かぶ。 心身ともに充実した日々はとうの昔に終わってしまったことを実感した今年だったが、少しだけ、馬齢という年数を重ねた分だけ気づかずに何とかなっているものもあるような気がした年でもあった。 少しの幻想と少しの諦観と少しの無理と少しの狡猾さで、来るべき年を過ごしていこうか。 人と比べる相対的な充足感ではなく、ささやかながらも、自らが得心する絶対的な充足を求めていくことにしよう。 茶褐色の羊水の中で、ふと、そんなことを考えた。