バイキングの前に立って思うこと
久しぶりの出張で久しぶりのホテル暮らしをした。昼は街のおしゃれな店でランチ(或いは簡素な食堂で素うどん)、夜は街の居酒屋だった。年寄り早起きはしばらく部屋で待って、朝7時からのバイキング朝食会場にでかける。経る年のせいか、嫌いな人も嫌いな食べ物も少なくなり、どうぞご自由にとならんだ食材のほとんどを好ましく思い、量は少なめに気を付けるけれど、数は結構取ってしまう。トレイに所狭しと並んだ食材を見て、果たして自分が切実に今食べたいものは何か、とふと思う。本当に欲しいものなんて、考えるまでもなく向かって行って、それを得たり得られなかったりしたものだが、どうしたことだろう、本当に欲しいものがわからなくなってしまったのか。早く春が来て、少しぬかるんでいてもいいから、田圃の作業道や里山の上り坂を、ゆっくりゆっくり歩いて、一日中付きまとう現代の無音のノイズとやらから、身を遠ざけて、「平穏な欲望」に向かい合いたいものだ。