混沌としている世の中だから読みたい本
昨年読んだ本の中で、忘れられない本曽野綾子著『貧困の光景』(新潮社) 著者が、NPO活動の中で訪れたアフリカなどの最貧国での光景~薬や石鹸、医療器具のない病院、引き取り手のないミイラのような遺体、親の手で殺されるこどもたち~、日本人の常識とはかけ離れた状況にある人々の過酷な現状を静かに眺めながらキリスト教者としての視点で書き綴っています。はっきりしない混沌としたものを、抱えて生きていかなければならない人間の本質的な問題を問いかけられているようでした。 今の日本社会の状況に甘んじたり、無過ごしたりするのではなく、自分自身が今どこにいて、日本という国はどこにあるのか、私は、何故今の日本に生まれてきたのかそんなことを考えさせてくれる本でした。 そして、コチラはおまけ。1989年発行、安岡正篤著『干支の活学』(プレジデント社)言わずもがな、干支の本です。お正月なので、紹介させてください。 干支(十干十二支)は、古臭い迷信、非科学的なもののように考えられがちなですが、実は、考古学・暦学・天文学といった分野において、洋の東西を問わず、大変重要視されている経験哲学ともいうべきものだそうです。干と支の組み合わせで60型範。ふだんは意識せずに暮らしている60年で一巡りする干支というものを軸に、今へ至った道筋、これから進むべき方向に思いを馳せるのもまたいいものです。 ちなみに、今年の干支は、戊子(つちのえ・ね)です。「戊」は、樹木が茂り過ぎ、風通しや日当たりが悪くなり、木が傷み、枯れてしまうことを防ぐために、思い切って剪定をしなければならないことを示しています。そして「子」は、善悪ともども新しいもの(生命力)がどんどん生まれてくる状況を表しています。 ですから、素人の私が読むと今年は、「丁亥(ひのと・い)の前年度からのからの流れで、複雑化し紛糾している動きをしっかりと処理して(風通しを良くして)新たに生まれてくる者たちにとってよい環境を整えてやる年にしていきたい。」となり、見通しを立てることを楽しんだりもできます。 前著は、横方向の広がりに気づかせてくれる1冊、後著は、縦方向の広がりを感じさせてくれる1冊でした。 溢れる情報の中で、問題は何なのか、何故問題なのかそんなことを考える際に、いつもと違う世界から眺めてみたいときにお勧めの2冊でした。