河野武氏の“とんちんかん”発言へ
河野武氏が週刊ポストの取材を受けて、自身のブログで私の記事にあった一節を“とんちんかん”と評していたので、その言葉をそっくりそのままお返しします。河野武氏のブログはこちらhttp://smashmedia.jp/blog/2010/04/003387.html下記、わたくしミヤワキへの言及のみを転載<それにしても宮脇氏の「デルのTwitterでの売上が全体の0.002%しかない」という指摘はとんちんかんだよなあ。300万ドルは300万ドルであって、そこにいくら人件費がかかったとかROIベースで比較するのはまだわかるけど、なんで総売上と割り算するのか意味不明。もし寝てても年間3億儲かるなら最高じゃんね。> 「300万ドルは300万ドル」とはこの文脈からして「すごい」を指すと推測しますが比較対象がなければ「すごい」は主観に過ぎず、幼稚園児が大人を見上げて「大きい人」と表現するのと同じです。 河野武氏が提示する「ROI」にしても同じ。 人件費割りで比較できればそうしたでしょうが、成功例を伝えるデルのブログにそれは明示されておらず不可能です。そして正確を期すなら、デルのカスタマセンター、あるいはマーケティング担当者、または専任担当者の何人がツイッターに関与しその述べ時間が何時間で総人件費はいくらか、そして販売した商品に含まれるアウトレットと新製品の割合、またアウトレットにかかった返品から工場での商品チェックまでの各種経費が分からなければ「ROI」、つまり「投下資本利益率(いくら使ってどれだけ儲かったか)」ははじき出せず、これをもっての比較しか理解できないというのは商売の「現場感覚」からは“とんちんかん”としか評価のしようがありません。セミナーコンサルタントや学者はこういう「理想論」を好みますが。 ちなみに私が経営者でも広報担当でもかかった人件費を積極的に公開することはないでしょう。高ければ「ROI」が悪化しますし、低ければ「そんなに儲けやがって」と、ひがむ客が発生するリスクをわざわざ高めることはそれこそ“とんちんかん”です。 総売上と比較したのは、その数字が公開情報でなにより経営の概略を見る時の代表的指標ということも意味不明でしょうか。 ちなみに利益率は経営方針や業種により異なり、網羅的に議論することなど不可能です。もちろん、先ほどの「ROI」を算出するためのすべての数字が出揃うなら可能ですが。 そして転載部分、もっとも“とんちんかん”な箇所がここ。「もし寝てても年間3億儲かるなら最高じゃんね」 論が飛躍どころか、脱線というか議論にならない“とんちんかん”です。 誰がどこでそんなことを書いているのか、私は週刊ポストを28回読み返しましたが、どこにも「寝てる」などとは書いていません。自分のインタビューが「編集」されたからといって、私に矛先を向けるのは大迷惑です。 いや、私は結構。しかし、デルに失礼です。ツイッターという新しいツールを活用する方法を模索し、「300万ドルは300万ドル」もの売り上げを上げた企業努力を無視して「寝てても」とは。 私は飛び込み営業の経験があり、こうした営業努力をないがしろにする経営者に属する人を好ましく思えません。 そしてこれは転載部分の前段にかかってくるのですが、週刊ポストのインタビューを受けた河野武氏以外、私を含めた3人の名を挙げ、「普段から同じような批判をしている」 とするのなら、この記事も読んでいたのでしょうか。■ツイッター成功事例の裏を読む。デルの成功事例はたった2千円http://web-tan.forum.impressrd.jp/e/2010/03/10/7513 ポストの記事での指摘は初出ではなく、すでにおこなっている「指摘」です。まぁそこまで「ヒマじゃない」と、ネット議論にありがちな答弁をされるかも知れませんが、批判ではなく指摘で「寝てても」に思うところがあるのが、こう記しているからです。<もちろん「2,000円の売り上げ増加にも取り組む営業姿勢」は注目すべきですが> ポストのインタビューでも同じく答えたのですが、「編集」されて掲載されなかったのは、議論がぶれると読者が混乱するからと私は理解しています。 ポストの記事では<ツイッターによるマーケティングの成功事例として、真っ先に 語られるパソコンの通販で有名な米デルです。ツイッター経由 で2年間に300万ドルを売り上げたと話題なのですが、 少し冷静になってほしい> と、デルの事例にはいるまえに提起しています。 そして総売上からの比較をして<年商1億円の中小企業なら年間2千円ちょっとの売り上げに しかならない> と続けています。先ほどのROIではありませんが、従業員ひとりが「つぶやき」に要する時間を分子として、すべての従業員の労働時間の総和を分母にした割合は従業員数の少ない中小企業のほうが負担が重くなります。 つまり高らかに謳われる成功事例が中小企業ベースに置き換え、メリットがどれくらいに相当し、果たしてそれがメリットとなるか否かを見極めなければならないが「冷静になって欲しい」に込められています。「文字として表現されていなければわからない」 と仮にいうのであれば残念。限られた紙面という制約のなかでは「行間」を読むのが昭和の頃の日本語の作法で私は是に準じてゲラ(入校前の確認原稿)にOKをだしています。 そして「ROI」でいうならシンプルな結論を。「年間2000円の売り上げアップなら商談のついでに取引先に “助けると思って買ってください”とお願いするほうが ツイッターでつぶやくよりROIは高い」 恒常的な売り上げ増加ではなく単発なら、お願いを聞いてくれる人は多いので。あ、これは理想論やマーケティング理論などではなく営業現場の経験則から。 週刊ポスト編集部と河野武氏とのやり取りを私は知りません。 そして基本的に反対意見や、否定論にも「そういう見方もあるのか」 と考えます。しかし、“とんちんかん”という指摘自体が“とんちんかん”と思う以上、反論しておかなければ河野武氏の主張が「流通」するのがネット社会の常識。 だからそっくりそのまま河野武氏にお返しします。