Facebookはインフラだ・・・て言った奴でてこい
先送りしているあいだに化けの皮・・・馬脚・・・いや、まぁ株価が正直に告白し始めたFacebookについて。 鳴り物入りの大宣伝で公開されたFacebookの株価が続落しています。 公開初日も買われたのは最初だけで、すぐに売りに転じて、上場の幹事をつとめた証券会社が必至に「買い支えた」という噂も洩れ伝わります。 初日についてはシステムトラブルもあり、それが投資家心理を冷やしたという「弁明」も聞こえましたが、週明け二日続けての下落が現状を表していると見るべきでしょう。 わたしはもともとFacebookに懐疑的な立場ですが、株は博打。 特に新規公開株はしばらく乱高下するのは当たり前のことで、Facebookだけ特別視するのはすこしフェアではありません。 今回の下落については、公開直前に公開価格を引き上げて、さらに公開株数も増やすなど、マイナス要因がありました。そしてこのふたつの事実から見えてくるのは「関係者の利益確定」。 株式相場の格言に「利食い千人力」 というものがあります。株価というのはバーチャルな資産に過ぎず利食いとは、理論上の利益を現金化するのは、なににも勝るという戒めです。 公開価格とは、手持ちの株を売る値段で、高すぎれば相手にされず安すぎれば損をします。ただ、体面をきにしなければ高く設定する方が得です。例えば1000円で売り出した株を誰も買わず、結局500円まで値が下がってから売れた場合は「赤っ恥」をかくだけのことですが、同じ株を100円に設定していたら、差額の400円を損することになるのです。 また、公開したからといって、発行株式の全部が売買の対象となることはありません。逆に全部売り出せば、翌日に経営権が別の誰かに移る可能性も生まれ、そんないい加減な会社の株を買うものなどいません。いや、仮にFacebookが全株を販売したのなら、グーグルやマイクロソフト当たりが買い占め=買収することでしょう。 つまり、売却する株数とは売却益による資金調達が目的で、おのずと制限されるということです。 そしてFacebookにおいて、公開価格と売り出し株数は「絶妙」だったということです。少なくともこの3日間でみれば、売り手はしっかりと「利食い」ができたわけですから。 ここから少し意地悪な見方をすれば、「公開時の株価がピーク」 とみて、売り出し株数を増やしたともみれます。 実際に収益性への疑問は上場前から噂されていたことです。 広告に依存したビジネスモデルで、その広告についてはゼネラル・モーターズが効果に疑問を持ち、Facebook広告からの撤退を示唆しています。 しかし、わたしがFacebookをとりあげようとした2週間前から懸念していたのは、もっと根本的な問題があったからです。 まず、日本のWeb業界が旗を振り、マスメディアが尻尾を振るFacebookの利用者9億人という数字への疑問です。 Facebookはアクティブユーザーを「1ヶ月に1回以上のログイン」 としています。SNSとは人と人が繋がることを特徴とする・・・とされるネットサービスです。それが月一回訪れる電気料金の検針員と同じレベルの接触頻度でカウントされているのです。少なくともわが家を訪れる東電に委託された検針員さんとわたしは友達ではありません。 たまに利用はしていても、それが「つながり」を意味するとはいえないのです。 すると「いいね!」に代表される「推奨」にも疑問符がつきます。「いいね!」とは、Facebook上に投稿された文章や写真、コンテンツを評価する機能で、Facebookを礼賛する阿・・・識者達の言葉を借りれば「友人や知人の推薦(レコメンド)」 となり、ひいてはマーケティングに使えると絶賛されていたものです。 それは「Web2.0(笑)」というムーブメントの頃、さかんに持てはやされた「集合知」と同じ思想ですが、結論を述べれば「友達が良いと奨めても、友達はその道の専門家じゃない」 ことが大半です。もちろん、友人の感想や体験談は参考になりますが、「いいね!」 と言われただけでは、なんの役にも立ちません。 この機能を否定しているのではありません。「いいね!」とは「Like」のことで、仲間内で「これ、好き」と表明するだけのもので、ラーメンは塩味が好き、テントウムシが好き、横縞より縦縞が好きといった他愛のない意思表明に過ぎません。 それを「マーケティングに使える!」・・・というのはそういった人が儲けるための方便です。実際に、Facebookが上陸当初は「●万人の“いいね!”を集めた!」 と大騒ぎしている企業と、それを煽った著者はいま確かにそれなりの小銭を稼いでいます。これは日本のWeb業界と出版界の構造的問題・・・いや欠陥ですが、今回は議論がぶれるのでいずれ機会があれば触れることにします。 というわけで「推奨」はFacebookのビジネスモデルに貢献させることは難しく、やはり「広告モデル」に頼ることになってしまいます。 すると、そもそもの「9億人」にも疑問が湧いて出ます。 国別の利用者数はアメリカが最多で1億5千万人。ふたりに一人が利用している計算となり、現実的に見てこれ以上の増加はあまり期待できません。 で、次がブラジル、インド、インドネシア、メキシコ。 ブラジル、インド、インドネシアはまだまだ伸びしろがありますが、如何せん発展途上国。10年後はわかりませんが、短期的に見た「広告」の単価は期待できません。 以下はモーニングスターの記事より引用12年1-3月期のユーザー一人当たりの売上高も北米が1.21ドルに達したのに対して、新興国の多いアジアが0.53ドル、その他(アフリカ、中東)が0.37ドルにとどまっており、収益性は低い。ただ、新興国ですでに多くのユーザーを抱えているだけにユーザー単価の上昇で売上高成長が見込める点は先行きのプラス材料だ。 http://www.morningstar.co.jp/event/1205/ms2/index3.html プラス材料ではありますが、これを適切な日本語で表すと「他力本願」。 そして多くの新興国は政治リスクも抱えております。 つまり、9億人のユーザーすべてが利益に絡む訳ではなく今後もユーザー数の増加が見込まれる、東南アジアや中東、アフリカからの収益は短期的に見て多くは期待できないのです。 さらに、ここに来て欺瞞が明るみとなりました。 それはFacebook自身がIPOの申請書で認めたところで「スマホ対応の遅れ」 が収益を悪化させるとあります。モバイル端末としているので携帯も含めて、対応が追いついていないのです。 ジャスミン革命、アラブの春と大騒ぎされたとき、Facebookもその貢献が讃えられました。「右手に石、左手に携帯電話」 この言葉が示すのは多くの活動を支えたのは「携帯電話」であり、Facebook自らが弱点と見とめるモバイル端末です。 実は中東や東南アジアと行ったネットインフラが脆弱な国では「ショートメール」が好んで使われていました。ちなみにツイッターの140文字の規定もこれが基準となっています。 また日本をはじめとする先進国のようにメールアドレスを気楽に好き勝手に取れる環境にはなく、その代用にFacebookが使われていたもいえます。 そこから「アラブの春」に貢献したという「イメージ作り」は成功しましたが、ビジネスモデルとしては成立していないのです。革命的出来事とFacebookを重ねた印象操作が行われていたのです。もちろん、これはFacebook自身がしたというより、Facebookを持ち上げることで儲かる人たちの仕業で、先の言葉を止めた業界全体の悪弊です。 パソコン版のFacebookのインターフェースには結構な面積を占有する「広告枠」があります。これが収益を支えています。 これを同じように「スマホ」に当て込めば、とても見づらい画面になります。つまり、スマホが普及し、スマホによる利用者が増えるほど収益機会が減少するのです。 さらにスマホが苦しめます。 かつてFacebookを礼賛する連・・・方々はこういいました「Facebookはインフラだ」 さらにこう加える人もいました。「いずれメールもアプリケーションもいらなくなる。すべて Facebook上で完結するからだ」 Facebookが普及した理由のひとつに「オープンアプリ」が挙げられます。 Facebook上で動作するアプリケーションが自由に開発され提供されたことで、次々と利便性が高まったことです。 しかし、いまアプリの開発者達は、スマホに直接アプリを提供できるようになりました。グーグルのアンドロイドもアップルのiOS(iPhoneなどのOS)向けにも提供できます。 するとわざわざ「スマホ対応の遅れているFacebook」をあいだに挟む必要性がなくなっているのです。 ただし、これらもいずれ解決するかもしれません。 解決しないかも知れません。 わたしが2週間前にFacebookをネタにしようと、その経営手腕に疑問符を呈すと決めた決定的な理由は、これです。「ザッカーバーグは買い物ベタ(あるいは交渉ベタ)」 上場直前の4月のあたまに10億ドルで買収した写真共有サイトの「インスタグラム」。 買収1週間前にベンチャーキャピタルのセコイアキャピタルがつけた企業価値は5億ドルです。 つまり1週間で倍の評価をしたこの会社の売上はゼロ。 儲かるかどうかもわからない会社に、創業者でありCEOのザッカーバーグは独断で大金を投じたのです。 昨年亡くなったスティーブ・ジョブズと比較する声もあり後継者と賞賛する声もありますが、わたしはこれにはノーを突きつけ、それが故にFacebookの業績に懸念を覚えるのです。 なぜならジョブズは、アタリ社に勤務していた頃、5000ドルで請け負った成功報酬の仕事を700ドルと偽り共同創業者の技術者に丸投げし、「山分け」と称して350ドルしか支払わなかった男です。 また、アップル社を追われた後に訪れる何度の苦難にも巧みな交渉術で交わして、後の伝説を作りました。 つまりジョブズなら、倍の値段ではなく「半額で買いたたく方法」 を考えたことでしょう。 グーグルとの比較もありますが時間が尽きたのでここまで。 ただ、グーグルは「マッドサイエンティスト」で、ザッカーバーグは「お調子者」というのがわたしの印象です。ちなみにジョブズは「商売人」です。