鉄道員
水嶋ヒロさんに触発されて小説家を目指しています。 と、いうのは嘘。拙著を上梓し、うかれ気分でいたころ、法事で敬愛する伯母が「おばちゃんには難しいわ、でも頑張って読んでみる」 といったことがひっかかっていました。小説などの物語なら伯母はもっと喜んでくれるのではないかと。 漫画の原作を手がける機会に恵まれた時、進まぬ企画の影で小説風の別のストーリーを書いたこともあります。 そして、今年の目標は一本物語を書くこと。 と決意して原稿用紙に向かい重大の事実に気がつきます。「小説ってどう書くんだっけ?」 私が好きな小説は歴史物や、史実をベースにしたモノばかりで他は海外作家のベストセラーをときどき読みますが、自分で書きたいと思うジャンルではありません。 迷った時は「ベタ」に限ります。 というわけで手にしたのが浅田次郎の「鉄道員」。 映画化もされ説明不用でしょう。 ただ、表題作・・・職業に人生を賭す生き様と、そこに重なる魂に涙しましたが、どうしても気になったのは「つくりばなし」 である点。短編集であるので読み進めるうちに薄れてはきますがどこで頭にひっかかります。 しかし、「角筈にて」でやられました。 自分を捨てた父親との邂逅、育ての親のおじさんの優しさに涙腺が崩壊します。 中学生になりクラス名簿に「堀内方」とあることがイヤで、苗字を変えて欲しいと願った主人公に答えず、風呂桶職人だった伯父さんは仕事場にこもり、板きれに主人公の名前を下手くそな字で書き込み「どうでえ、これでカタサマはいらねえだろう」 と表札をかけてくれたこと。その表札は、家を継いだまたいとこがまだ掲げていること。そしてそれは約束によって掲げられたものだったと。 気がつきました。 小説って「つくりばなし」。つらすぎる現実からしばし見る夢と。■鉄道員http://www.as-mode.com/check.cgi?Code=4087471713