酒でも飲みましょうか?
「酒でも飲みましょうか?」と、一度でいいから言ってみたかった。生きていれば六十九になる父、きっと陽気に飲んだだろう。寡黙に飲むのは苦手で、いつも人を呼んで楽しくしているのが好きな人だったから、さしで飲むのはお互い照れるに違いない。仕事で接する人の中に、同じ歳くらいの方がいると、そこに父の面影を重ねて見ることがある。手のシワもこんふうに沢山あったんだろうか?白髪で頭は真っ白だったんだろうか?声はしゃがれて少し低くなっていたのだろうか?そんな父の面影を見せてくれた人とは、本当は一緒にお酒を飲んでみたいのだけれど、それを言い出せたことは無い。仕方ないので、父の写真の前に北の誉のワンカップを置いた。どうぞ飲んでください。あとで、僕も飲みますから。今日は父の28回目の命日。あの日の朝は晴天だったが、今日の札幌は大雪だったそうです。