神経網膜再生に光
難病の網膜色素変性症など、視力が極端に低下したり失明の危機に頻している人に、文字通り光が差してきた。理化学研究所の発生・再生科学総合研究センター(神戸市)や京都大学、大阪大学のチームが、さまざまな組織や細胞になるとされる胚性肝細胞(ES細胞)から、立体的な層構造を持つ目の「神経網膜」を作ることに成功したのだ。英科学誌「ネイチャー」に掲載された。 同チームは、いろいろな細胞の表面で働くラミニンというたんぱく質などを培養液に加えて、ES細胞を培養したところ、9日後にはES細胞の塊の一部が、「眼杯(がんぱい)」になった。これは目のもとになる組織で眼杯だけを切り出して2週間さらに培養すると、直径約2ミリの網膜ができた。驚いたことに、視細胞や神経節細胞などが正常な神経網膜と同様に複雑な層構造を形成したという。 理研の笹井芳樹グループディレクターは「ヒトのES細胞から神経網膜を作り、移植して治療する再生治療につなげたい」と話している。光を感じる網膜の主要部分である神経網膜再生に道が開けてきたことで、またひとつ、再生医療は大きな前進を遂げたことになる。 川島和正メルマガ無料登録