Jena6を通して、いろいろ考える
今、私が住んでいるアメリカ合衆国で、Jena6がとても話題になっています。 Jena6とは、ルイジアナ州にあるジェナ高校にて、1人の白人の男の子に暴行した6人のアフリカ系アメリカンの男の子たちを指している。同じルイジアナ州にあり、2年前にハリケーン・カトリーナで被害を受けたニューオリンズが海沿いにあるのに対し、ジェナはルイジアナ州の真ん中あたりに位置している。で、なぜ6人のアフリカ系アメリカンの男の子が、1人の白人の男の子に暴行を働いたのか。それは、ジェナ高校にはまだ強い人種分離が起きているからだ。アメリカの高校のお決まりの行事、プロム(ダンス・パーティー)も数年前まで白人とアフリカ系アメリカンの生徒は違う場所で開いていたという話もあるし、何しろみんなで集まって遊んだりする場所も違ったのだ。ジェナ高校には、校庭(といっても、日本のグラウンドみたいなものではない)の中心にとても大きな美しい木があった。そこでいつも集まっていたのは、生徒の90%の割合を占めている白人生徒たち。ある日、一人のアフリカ系アメリカンの生徒は校長先生に質問をした。「僕達も木の下にいて、座っていいのでしょうか?」校長先生はびっくりしながらも、「誰でも木の下に座れますよ。」と答えた。しかし!!次の朝、驚くことにその木には、首をつる紐が下げられていたのだ。この首吊り紐、アメリカではアフリカ系の人々が奴隷にされて、差別されて避けずまれていた頃に、白人至上主義者の間で繁栄したクー・クラックス・クラン(KKK)とアフリカ系アメリカン差別を象徴するものとして、かなりタブーなものなのである。誰かのイタズラだろうと、先生も白人生徒もこのことを重大視しなかったのだが、これをきっかけに、白人生徒とアフリカ系アメリカンの生徒の間で亀裂が走っていった。この2つの人種の生徒の確執が1年以上もかけて起きている最中に、アフリカ系アメリカンと対立していて、明らかに人種差別をしていた一人の白人の男の子が、暴行を受けてしまったのだ。白人生徒たちもかなりのハラスメントをアフリカ系アメリカンに対して働いていたから、こういうことが起きてしまったのだろうけど、暴力はやっぱりいけない、という人が何人もいるだろう。しかし、アフリカ系アメリカンを暴行した白人たちは大した刑罰を受けなかったのに対し、このJena6たちは随分重い刑罰を言い渡されようとしているのである。アメリカ合衆国には、一般の人々が参加する陪審員制度があるが、その陪審員も全員白人、あきらかにJena6が不公平な扱いを受けたということでとても問題になっているのだ。ちょうど、映画「評決のとき」みたいな状況なのかもしれない。あれもそういえば、ニューオリンズだったかな。インターネットを通して、この事件を再調査するように求める署名が回ったのもあって、これだけ話題になって、テレビでも取り上げられるようになったのだけど、インターネットには悪いことが露出してしまうことももちろんある。こちらには、日本のmixiみたいなfacebookというコミュニティーサイトがあるのだがそれに参加していたルイジアナ大学に通い始めた1年生の女の子が明らかにJena6をバカにしているビデオを掲載してしまったのだ。どうバカにしているかというと、彼女の白人の友達たちが海岸にて、泥を自分達の体に塗りつけて、Jena6のまねをしているのである。私も写真は見たのだけど、はっきりいってかなりひどい。「こういうことって、何十年も前にやってたことなんじゃ・・。」と思いながらも、出る言葉もないほどひどい。怒りに震えたある閲覧者は、そのビデオをyoutubeに掲載してしまい、Facebookでは、このビデオに反対するグループまで出来てしまい、このビデオを掲載した女の子は、facebookから脱退を余儀なくされるばかりでなく、大学でもかなり問題視され、地元の新聞にインタビューもされ、携帯電話やネットを通して、赤の他人からハラスメントを受けることになってしまった。私はこういうインターネットを通して、誰かを責めたてる風潮も誰かが犯した間違いをいつまでも責め続けるのも、本当は大嫌いなのだが、この女の子の言い訳がかなり酷すぎる。「私は本当に人種差別主義者ではありません。ただJena6に対する取り上げられ方が大げさすぎて、飽き飽きしていただけです。でも、アフリカ系アメリカンの友達もたくさんいます。私の父はガンで亡くなりそうなのに、電話も出来ない日々を過ごさなければいけなくて、とても憂鬱です。」取り上げられ方が気に入らないからって、なぜわざわざ明らかに状況を悪くするようなものを掲載するんだろうか。なぜ、私がこの言い訳に憤慨しているかというと、実は私にも同じような経験があるからだ。ある日、私は彼氏と二人でキャンパス近くを歩いていた。仲良く昼ごはんを食べた後で、その後は一緒に授業があってかなり機嫌のいい二人であった。しかし、そんな私達の機嫌をぶち壊しにすることが起きた。歩いている私達に向かって、「Dating with Asian, hahaha!!!」(おまえ、アジアンが彼女なのか、あははは!!)と走る車の中から明らかに馬鹿にしたように叫んだやつがいたのだ。もちろん、私も彼氏も黙っちゃいない。私は実を言えば、何を言ったかはよく覚えていないのだけど、怒り狂う私達に対して、「何よ?」という態度を見せた輩が数人いたのと、叫んだ張本人は、「ごめんなさい、僕は今酔っているんです。」と言って他の数人と去ってしまったのだけは覚えている。私はもう激怒しているのと、悲しいのでどうしようもない気持ちでそのときは気づかなかったのだけど、彼氏いわく叫んだ張本人は、他の友達に「ごめんね。僕は本当は人種差別者じゃないんだ。」と言い訳していたらしい。Facebookにとんでもないビデオを載せてしまった女の子にしろ、私達に叫んだバカ野郎にしろ、絶対に人種差別者じゃなかったらそんなあほなことをしない、と私は思う。こうやって、自分の過ちを認めずに平気で人種差別してません!!って言い切る人がいるから、いつまでも同じようなことが繰り返されるのだろう。だから白人と非白人の間の亀裂も確執も、なかなか収まらないのだろう。今、アジア系アメリカンの授業を取っていて、今ちょうど、過去にどれだけ酷い扱意を受けたかということについて、読んだばかりだけど、状況は今でも過去でもあまり違わない気もする。結局、自分の過ちをちゃんと認めないと、何も変わらないんじゃないかなー、と思うのでした。