モビリティランド社長が語る モータースポーツの未来
モビリティランド社長 田中薫氏が モビリティランド主催の二大イベントを終えて語った。「とにかく無事できて良かったです」と振り返り、次のように続けた。「日本のファンの方には、お待たせしましたね。ドライバー/ライダーやレース関係者の方にはお帰りなさいという感じです」「F1は3日間で20万人にご来場頂いたということでした。やっぱり3年ぶりということで、皆さん待っていたんだなと思い、本当に嬉しかったです」そう田中社長が語る通り、F1は前回大会となる2019年と比較してもファンの数は目に見えて多かった。しかし現地では特に、これまで比較的少数派だった若年層のファンや、親子でF1を楽しむファンが目立つように感じられた。ただ本当に若年層は増えているのか? その疑問を田中社長にぶつけてみると、やはりデータとしてもそうした結果は出ているとの答えが帰ってきた。「若年層が増えたというデータはもちろんありますし、私がざっと見た限りでも随分若い人は多いなと確かに思いました」と田中社長は言う。「あと、子どもがすごく多かったですね。いわゆる団塊ジュニアと言われる世代の方がお子さんを連れてきているみたいな感じですかね。見ていても、小学生ぐらいとか、もっと小さなお子さんもいらっしゃいました」「段々とレース自体も面白くなってきているというのはあるのでしょう。そういう意味で、次の世代がどんどん増えてくれると良いですよね」ここにはリバティ・メディア傘下のF1が進めるソフト面での強化、つまりスポーツとしてのアクセス性向上という点も大いに関係しているだろう。F1の積極的なソーシャルメディア運用をはじめ、Netflixのドキュメンタリー番組『Drive to Survive』が世界的に大ヒット。新型コロナウイルスのロックダウンが行なわれている間にはeスポーツシリーズが開始され、これまではリーチし得なかった層からもF1に注目が集まっている。ここには言葉の壁という日本特有の問題があるかもしれないが、日本でも”F1ブーム”が再燃する兆しが見えてきたと言える。 角田の契約は来季まで延長され、2023年のF1日本GPも多くの観客動員が見込めるだろう。F1日本GPの観客動員数の過去最高記録は、2006年に記録した30万人超え。これは席間隔が狭かったリニューアル前の記録であり、当時は仮設スタンドも多く用意されていた。現在も仮設席を増やすことで、20万人からさらに動員数を伸ばすことも可能ではあるものの、実現は容易ではないと田中社長は語っている。「可能と言えば可能ですが、困難と言えば困難です。輸送体制やインフラ設備など、我々だけの問題ではありません。街を挙げて色々とご協力して頂いていますので、いきなり30万人は難しいでしょう」そう田中社長は言う。「仮設席をもっと増やしていけば、キャパシティは増えるでしょう。しかし”Withコロナ”の社会が続く可能性もある中、社会状況をどう読んでいくかというのは、そう簡単ではないですね。ただ、今回は本当にあっという間に売れました。予想よりも早いペースでとてもびっくりしましたよ」F1が”満員御礼”となった一方で、MotoGPの日本GPはチケット完売には届かず、3日合計で8万8,597人を記録した2019年大会から、数字上では3万1,115人のマイナスとなった。しかしここには、競技やサーキットのキャパシティの違いもあるとして「完売したから、それが成功だという訳でもない」と田中社長は言う。今季のMotoGPでは、日本メーカー勢が軒並み苦戦。ファビオ・クアルタラロ(ヤマハ)が孤軍奮闘したものの、ドゥカティ勢が”主役”というシーズンになった。確かにそうした面も数値として反映されているとも考えられるが、ホンダの”エース”であるマルク・マルケス(レプソル・ホンダ)が日本GPの前戦アラゴンGPで復帰したことが、大きくプラス方向に作用したと田中社長は推測する。「やはり、ファン層は2輪と4輪によって違います」と田中社長は言う。「どちらかというと2輪は40~50代という感じで、コアなファンはきちんと来て頂けたというところです。こちらも3年ぶりなので、皆さん待ってくれていました」「確かに今季で言うと、F1だけが突出してすごかったですが、MotoGPが売り切れにならなかったからといって、それで『失敗でした』ということはないですよ」「これもやはり3年ぶりでしたし、マルケス(マルク・マルケス/レプソル・ホンダ)が間に合ってくれたのはすごく大きいですよね。残念ながらロッシ(バレンティーノ・ロッシ)は昨年、(日本GPが)開催できないうちに引退してしまったというのがありましたし、スズキさんが今年最後になってしまったというのもありますが、マルケスが帰ってきてくれたというのは大きいですね」「F1がそんなに”爆発”するのかというところで驚いたくらいですので、MotoGPはある意味、2019年のコロナ前に戻ってくれたという点では、少し安心しています」