見付からない
聞きたい曲が見付からない。ウォークマンに千以上の曲を常に入れて持ち歩いてるのに、このところ、聞きたい曲が見付からない。家を出て、何を聞こうが迷いながら歩いて見つからないまま、新宿に到着してしまう。そんな時は、このまま新宿に背を向けて会社まで歩いてやりたい気持ちになる。聞きたい曲が見つからないというのは音楽だけの事ではないような気がします。自分自身、どう進んで行ったらいいのかが分からなくなっている時、そんな時は、私は聞きたい曲にさえ、迷うのだと思う。これも違う、あれも違う、これも欲しい、あれも欲しいと、いつも、一つの事に満足せずに私は、もっともっと、もっと上をと欲張っている気がします。容姿も性格も才能も十人並みなのに望むものだけは、人一倍、高望みなのです。仕事があって、住む家があって、家族がいて、少ないけれど友達がいて、一体、何が不満なのか自分でも分からないのです。だけど、私はもっともっとと望んで高望み故、叶えることが出来ず自分の人生に物足りなさを感じている。私が男だったら良かったのかもしれない。男だったなら、少年よ大志を抱け!くらいに言われたのかもしれない。だけど、私は女で、どう贔屓目に見ても女でそんなことにすら、不満を抱いてしまう。そんな私を見て、ある人は、恋をしろと言う。親は、早く結婚をと言う。だけど、私はきっと、そのどちらもうまく行くはずがないなと思う。私は何事も決めることができないのだ。もっともっとと願う気持ちが強すぎて一つに決めることが出来ないのだ。自分から恋をして奪うように、その恋を手に入れたとしても結局は、自分から突放すように手離してしまう。それなのに、望みのありそうな恋よりも絶対無理な人に恋をする性質である。自分自身が中途半場なくせに中途半端が大嫌いで自分が薄情なくせに、裏切られると傷つく。好きな曲は沢山あるのに、聞きたい曲が見つからないのはこうゆう自分自身を写しているようで恥ずかしいような情けないような気持ちになる。そう思う片隅で私は一生そうやって生きて行ってみせると覚悟に近い決心をするのだ。そして、私は明日も、聞きたい曲が見つからなくて操作音だけを聞きながら前を見て歩いて行くのだと思う。半分は諦めで。もう半分は希望を持って。