メモリー
残業でイライラした気持ちを持ちながらいつものように神田から中央線に乗った。乗った電車の行き先は「武蔵小金井」武蔵小金井行きの電車はいつも空いている。あたしは、優雅に(気持ちはキリキリ)空いてる座席に腰掛けた。ふと前を見た私は驚いた。小松・・くん・・?目の前に座って寝ている人は紛れもなく、高校の3年間、あたしの青春を注いだ小松くんだった。13年という月日を遡る。------------------------------------------------------------------小松くんが大好き。そのクールな視線も不良ぶってるしぐさも。ほんとは、帰り道で捨て猫を見つけてミルクをあげたりしてるんでしょ?あたしは小松くんに夢中だった。バレンタインが近づいていた。あたしは、友達と手作りのクッキーと言うタブーなものに挑戦していた。好きな気持ちが溢れそうで「好き」という言葉を一秒でも早く言いたかった。上手く行くか振られるか。あたしにはそんな事は関係なかった。バレンタインの当日。あたしは朝から授業なんて耳に入ってこなかった。カバンの中に閉まってある小松くんに渡すクッキーの事で頭がいっぱいだった。放課後、あたしは小松くんを視聴覚室の前に呼び出した。階段を上がってくる人くる人に心臓が口から飛び出して来そうな位ドキドキした。小松君にバレンタインのクッキーを渡した私は「好き」という一言を言うことができなかった。------------------------------------------------------------------------------------------小松君。今、この辺で働いてるのかなぁ。あたしは目の前の小松君をひたすら見ていた。御茶ノ水に着いた。あっ・・・。顔上げた・・・・。あたしは、まっすぐ前を見ることができなくて今度はあたしが寝た振り。--------------------------------------------------------------------------------------------------バレンタインから半年後。夏休みの八月。あたしは、小松くんと会えない時間に限界を感じていた。小松くんの顔が見たい・・・。小松くんと話がしたい・・・。あたしは、もうたまらなかった。学生名簿を調べて、小松くんを呼び出した。蝉がミンミン大合唱をしている公園であたしはひたすら小松くんを待っていた。来ないかもしれない・・・。--------------------------------------------------------------------------------------------------------目を覚ました小松くんが電車の中をキョロキョロしている。どうか・・・。あたしに気が付かないで!----------------------------------------------------------------------------------------------------------暑さでかいてる汗なのか緊張でかいてる汗なのかあたしはもうわからなくなっていた。自分で決めたことなのにあたしは逃げ出したくなっていた。米粒みたいな自転車が遠くのほうからだんだん近づいてくる。あ・・・小松くんだ。小松くんが来た。あたしはもう逃げることはできない。あたしの目の前で自転車をキュっと止めた小松くんが自転車を止めて、あたしの前に立った。「話って何?」小松くんが少し機嫌の悪そうな声で言った。あたしは、余計に言葉に詰まってしまった。少しの沈黙の後、あたしは「小松くんの事がずっと好きだった」といつもは何なんだと思うくらいの小さい声で言った。小松くんは少し沈黙した後「・・・ごめん」と言った。「そっか。そうだよね。ごめんね。夏休みなのに呼び出して」あたしは取り分け明るく言った。涙が出てしまわないように。小松くんは、自転者に乗って元来た道を帰って行った。あたしも小松くんと反対も道を歩き出した。じっと涙をこらえながら。後ろを振り向かないようにしようとあれほど誓ったのにあたしはつい、振り向いてしまった。豆粒のような、小松くんの背中が見えた。あたしは振り向いたことをやっぱり後悔した。こういう背中は思い出に残るものだから。------------------------------------------------------------------------------------------------------------もう四谷も通り越した。あたしの降車駅は次の新宿だ。どうしよう。小松くんに声を掛けようか掛けまいか・・・。ここで掛けなければもう二度と会えないかもしれない。でも声を掛けても小松くんは振った女の顔なんてもう覚えてないかもしれない。窓から、フランフランが見える。もう新宿は間近。迷っているうちに電車は新宿に到着した。あたしは座席から立ち上がった。小松くんも座席から立ち上がった。ホームに降りてから声を掛けよう・・・あたしは決心した。何を言いたい訳でもない。もう、恋なんて感情も残ってない。ただ、「元気?」と声を掛けたいだけなのだ。ホームに降りて後から降りてくる小松くんを振り返った。?????????????????!!!!!!!!!!!!!!!!!節目がちだったから判らなかったけど・・・。小松くん・・・・・・じゃねぇ・・・。自分の目の悪さに拳骨です。神田から新宿までの12分。嫌な思い出を引っ張り出してしまいました。初恋・・。