悔いが残る、オケロ・ピーター選手の一戦。
モスクワで初開催のボクシングの世界ヘビー級タイトルマッチ、そして日本のジム所属選手で初の世界ヘビー級の挑戦試合、WBC世界ヘビー級チャンピオン・オレグ・マスカエフ選手、世界ヘビー級チャンピオンといえば圧倒的に多くのアメリカの黒人選手が、その座に君臨していたが、旧ソ連圏の選手が主要4団体の世界ヘビー級チャンピオン、WBAが史上最長身・史上最重量を誇る怪物のようなニコライ・ワルーエフ選手(ロシア)、WBCの10年前、まだ新鋭の頃、ホープ同士の決戦カードとして組まれた、ハシム・ラクマン戦で見事に終盤に、左右の力強い連打でロープに追いつめ、止めの右で、ロープの隙間からリングサイドの記者席の机の上に、ラクマン選手を叩き落して勝利、時は流れて、チャンピオンのラクマン選手に挑戦、ヘビー級世界チャンピオンのアメリカの最後の砦、であるラクマン選手は、国の威信を背負って戦ったが、僅差のクロスした試合展開で迎えた最終回、スタミナの切れたラクマン選手にマスカエフ選手が左右の連打の猛攻、リング内を夢遊病者か酔っ払いのようにふらつくラクマンに、あわや初戦の再現でロープ外に、たたき出される寸前まで追い込み、3度ダウンを与え、チャンピオンになったオレグ・マスカエフ選手(カザフスタン)、IBFはウラジミール・クリチコ選手(ウクライナ)、WBOは番狂わせタイトル獲得したセルゲイ・リャコビッチ(ベラルーシ)、全て旧ソ連圏の選手が主要4団体の世界ヘビー級チャンピオンを独占。 アメリカボクサーの手にそれの奪回を目指し、全盛期のレノックス・ルイス選手に挑戦し、派手なうち合いを演じながら敢え無く倒された、奇抜な独特のヘアースタイルのシャノン・ブリックス選手がクリチコ選手への挑戦が決まりかけていたが、契約問題でこじれ、この試合は流れ、次にリャコビッチ選手に挑戦、オレがブリッグス選手のマネージャーならばクリチコ選手よりもリャコビッチ選手を選んだだろう、かなり重い体重でリングに上ったブリッグス選手、スタミナを考えて、大振りを避け、動きを少なくして、まるでフェイントをかけるように軽い左の巧みな、様々なジャブをついて、ガードを揺さぶり、そこへ大きい右を強烈に叩き込み、その後は無理なラッシュを避けるといった省エネボクシング、リャコビッチ選手は、ブリッグス選手が休むとそこへ、力強い左右とワンツー攻撃、左は顔面を捉えても、右が顔面を捉えることはなく、ことごとく空振り、ラウンドのポイントは一進一体、ついに迎えた最終ラウンド、始めはこのラウンドのポイントをなんとしても取ろうと積極的に攻撃を仕掛ける、それに対しブリッグスは相変わらず省エネ、左のジャブをノーモーションでスピードだけで小さく叩く、ラウンドの終盤にダメージの蓄積で、堪えの堪えていたリャコビッチ選手はブリッグス選手の右を受け、棒立ちになりよろめく、温存していたスタミナが一気に爆発、猛攻を受けリャコビッチ選手が強烈なダウン、立ち上がったが足がふらつく、ストップかと思われたが、残り時間は後10秒ほど、試合再開、ブリッグス選手ここぞとばかりに猛ラッシュ、リャコビッチ選手は足を踏ん張る余裕さえもなく、ロープの隙間からリング外のタイムキーパーの机の上叩きつけられ、自分の頭でゴングを鳴らすところ、リング外にたたき出されたところで試合がストップされ、12回2分59秒、試合の残り時間が後1秒、TKOでブリッグス選手は世界ヘビー級のタイトルをアメリカへ奪還に成功。 主要4団体のチャンピオンの中で比較的にタイトルを取りやすいチャンピオンはWBOのリャコビッチ選手と、もう1人はWBCのマスカエフ選手、ニホンのジム所属のピーター選手、出身はウガンダ、所謂、輸入ボクサーである、代表的なのは克っての勇利・アルバチャコフ選手、現役世界チャンピオンンのイーグル・京和選手、等と同じようの素質に目をつけ日本のジム引っ張ってきて、そこでトレーニング、試合のマッチメーク、東洋太平洋のヘビー級のチャンピオン、スピードの溢れたフットワーク、速いジャブに、強烈な右ストレート、この地域ではもはや敵なし、今年に初めての世界との試合、判定で敗れたが、最終回にダウンを与え、KO寸前にまで追い込み、この試合内容が認められ世界ランカーの仲間入り、そして掴んだ今回のチャンス、マスカエフ選手がタイトルを獲得した後、長らくの間、世界ミドル級王者に君臨していたバーナード・ホプキンス選手が、ミドル級のタイトルを奪われ、強力なライバル選手が引退、ビッグマッチに餓える余りに、マスカエフ選手にヘビー級での挑戦を口にし、挑発を行っていた、克ってミドル級時代に借りのある、ロイ・ジョーンズ・ジュニア選手が世界ヘビー級のチャンピオンのジョン・ルイス選手に挑戦し一方的な大差の判定で勝利し、世界ヘビー級のチャンピオンの座に着いた、ライバルの彼に出来て、俺レに出来ないことは無いと、対マスカエフ選手とのヘビー級の試合は本気だと思う、だから挑戦が決まったピーター選手は幸運であり、日本のジム所属選手の世界ヘビー級タイトル挑戦も初めてだが、初の同級のチャンピオン誕生の可能性もあった。 ピーター選手のヘビー級らしくないフットワーク、スピードのあるジャブ、これでマスカエフ選手の接近を止めて、右の強烈な、必殺のストレートのカウンターを狙う作戦と思われたが、いかんせん、ビッグマッチの経験、世界ランカーとの試合の不足、日本国内でのスパーリング相手の不足、もう少し経験を積んでいたならという不安、対するマスカエフ選手はホプキンス選手に名指しされてのコケにされたような挑戦状、この試合に期するところがあり、試合会場はモスクワ、凱旋試合でもある、充分なトレーニング、仕上がりも良く、動きにスピードがあり、きびきびしており、踏み込みにもスピードがあり、こうなるとボクシングは相対的である、ピーター選手は緊張のセイでフットワークが使えず、プレッシャーをかけて接近されると、力なくロープまで下がり、ガードは手だけ、そこへ重たいワンツー、僅か1ラウンドの中間あたりでマスカエフ選手は簡単に飛び込み、強い右パンチの距離とタイミングを掴み、少し流れを変えようとピーター選手がジャブを出し始めると、それに合わせるように綺麗な右のカウンターがヒット、この右のカウンター1発で、ピーター選手はジャブを出すと右のカウンターを合わされそうで、怖くて出せなくなってしまった。 これが当たればというピーター選手のパンチはあったが、全てが空振り、マスカエフ選手の接近のプレッシャーがきつくなり、ピーター選手は後退、ロープにつまると、思い切り踏み込んで連打、右の強いパンチのタイミングぴたりと合い、左もいつもより破壊力があり、ジワリ、ジワリとピーター選手はダメージが残り、恐らく、初体験のヘビー級の強豪のパンチ力と圧力とプレッシャーによる精神的ダメージで消極的になり、セコンド陣も余力のある間に勝負を掛けようと大いにハッパをかけ、足を使って、先に早いジャブをつく展開に持ち込もうとするが、ピーター選手を調子つかす前に、よりプレッシャーをきつく、飛び込みも早く、手数を出して、ピーター選手の左のジャブに対して、必殺の右をカウンターであわせてくると、そこでピーター選手の攻撃はピタッと止み、また後退が始まり、マスカエフ選手も疲れが出だした10ラウンド、ピーター選手もダメージの蓄積が大きく、左右の連打でロープにつまり、低く攻撃をよけようとした時、右のアッパーを鋭く振りぬかれ顎に的中、ダメージのあるダウン、万事休す、良く頑張っていたピーター選手もこのダウンで、張り詰めていた緊張感が切れてしまいなかば戦意喪失気味で残りのラウンドを戦うことになり、マスカエフ選手も倒しきるスタミナが残っておらず、最終ラウンドのゴングを聞く事になる。 この試合も3人のジャッジの採点を試合の途中で公表する、オープン・スコアリング・システムを採用、8ラウンド終了後、マスカエフ選手がフルマークの8ポイント差のジャッジが2人、4ポイントさんジャッジが1人、ポイントでは明らかにマスカエフ選手が有利、パンチ力は超一流ではないがハートの強さは超一流、無理をせずにポイントを守る戦法に切り替える事無く、攻撃の手を緩めず、10ラウンドのはダウンを奪い、ピーター選手は起死回生の勝負をかけることができず、判定にまで持ち込むのが精一杯、途中経過よりもさらに点差の広がった、3-0の判定であった、ピーター選手の人柄と同様、少し温厚なところがあり、何が何でもという挑戦者らしいがむしゃらなところが見受けられなかった、2人の実力差以上に大差のポイントの離れた試合結果になってしまった、今のヘビー級戦線を見渡してみると、日本はIBFとOBFには加盟しておらず、クリチコ選手とブリッグス選手には挑戦ができず、WBAのワルーエフ選手は大きすぎ、強すぎる、となるとWBCのマスカエフ選手に次の試合あたりで勝った選手、今年、クリチコ選手に判定で敗れはしたが、ダウンを与え、強打を振り回して逃げるクリチコ選手を追い掛け回した、野獣そのもののサミュエル・ピーター選手あたりがタイトルを取ると、マスカエフ選手よりもはるかに強敵、オケロ・ピーター選手に好運にも巡ってきた世界ヘビー級タイトル獲得の大きな、唯一のチャンスだったように思う、惜しいチャンスを逃した。 ■「今日の言葉」■ 「 子育ての苦労の多い時は親子の 絆が太い幸せな時期でもある 」 (自然社・平成18年・新生活標語より)