祝・長谷川穂積、2階級制覇。
長谷川穂積は、昨日、バンタム級から2階級上げてWBC世界フェザー級王座決定戦に挑んだ、相手は同級1位の25戦25勝18KO勝のメキシコのファン・カルロス・ブルゴス、同級2位の長谷川は、いつも試合の後のリング上のインタビューの最後に、「もっと強くなりますので、これからも応援よろしくお願いします」、この言葉で締めくくる、「もっと強くなる」、この事は即ち、「もっとトレーニングをすることである」、トレーニング好き、トレーニング熱心の宿命とも言える、トレーニングによって筋肉が増強される事である、これが体重増加につながる、世界バンタム級の王者を防衛するたびに減量がきつくなり、10数キロの減量が必要になる、試合前の厳しいトレーニングによって10キロ位までは体重が落ちる、契約リミットまでの数キロが問題で、試合が迫ってくると、対戦相手の戦力を分析して、目前の相手に勝つトレーニングと言うより、専ら数キロの体重を落とすためのトレーニングになる、プロボクシングの世界チャンピオンは試合に備えて体重を落とす苦労をフアンに知らせるのは仕事でない、どんなに苦しい減量をしようとも、しなくとも、そんなことではなくリング上で如何にして相手に勝つか、それが仕事である、過去の日本の13回連続防衛記録が眼の前にちらつきだしてきた頃から、減量が過酷になりだし、前日計量をパスした後、リングにベストコンデイションで上がることがでるかの限界の計量を克服、タイトルを返上して階級を上げての試合が選択肢の一つ、また日本の連続防衛記録の更新も選択肢の一つで、それとアメリカのリングに登場、これも選択肢の一つ、10連続防衛の後、バンタム級のパウンド・オブ・パウンド決定戦のように、フェルナンド・モンテイエルとのダブルタイトル戦が長谷川にとって11度目の防衛戦となった。 この試合は、立ち上がりから明らかに長谷川のスピードが上まわり、ペースを完全握るかに思われた3ラウンド終了間際、長谷川の最大の欠点とも言える、試合の途中に両グローブを股関節の付け根辺りにつけて、ふっと気を抜いて、あたかも仕切り直すような動作、そくへモンテイエルの右の振り始めはゆっくりなのだが、途中からスピードアップするアッパーカットが、正確に長谷川の顎を大きくはねあげ、大きく膝を揺らしてロープに後退、ここでダウンをしていれば、カウントが入り試合再開と同時に3ラウンド終了のゴング、ところがチャンピオンの意地のように踏ん張ってダウンを免れる、そこへモンテイエルの的確な強い連打、レフリーが両者の間に割って入って試合をストップし、11度目の防衛に失敗し、世界バンタム級のタイトルを手放した、モンテイエルの一撃で顎を割られた長谷川は顎の手術を受ける事となった、再選はマッチメイクが難しく、ここで階級を上げる決断、それもスーパーバンタム級ではなく、2階級上のフェザー級に転向、久し振りに負けた後の再起戦、しかも2階級上のフェザー級の王座決定戦、通常は2階級もクラスを上げると、比較的に安全な相手とテストマッチのような試合、フェザー級の相手の体格、フェザー級のパンチの破壊力、フェザー級相手の時の自分のパンチ力の破壊力、もみ合った時の体力、スタミナ、これらを馴らすために、試運転のような試合を挟むのであるが、それをする事無くぶっつけ本番のフェザー級王座決定戦となった。 対戦相手のブルゴスはフェザー級で戦っていて、長身で、25戦全勝、18KO勝の強打者、いつもリングサイドで声援を送っていた長谷川のお母さんが1ケ月前に亡なった、幾つもの不安材料を抱えての一戦であった、フットワークを使って、スピードを活かし、すばやく飛び込み、コンパクトなパンチ、出入りの激しいボクシングと予想していたが、力を込めた強いパンチ、長谷川は打ち合いの戦法を選んだ、必殺の右のパンチが早くも炸裂、ブルゴスは膝を揺らす事もなく、長いリーチを使って、あまりスピードはないが、長谷川のパンチの帰りばな、合間に強いパンチを繰り出し、それが長谷川の顔面を捉える、バンタム級の頃なら相手に大きなダメージを与えたようなパンチでもブルゴスは前に出て打ち返す、長谷川もフェザー級のパンチを受けても怯まない、尚一層の攻撃を仕掛ける、フェザー級のパンチを恐れる事無く、果敢に耐えている、長谷川5発パンチを当てるとブルコスも3発くらいは当て返す、長谷川の強気の真っ向からの打ち合いの作戦に驚きながらも一抹の不安。 長谷川はそのスピードで、ブルコスに急所に当てさす事はなく、連打には連打で対抗、打たれたらさらに打ち返す、土付き合いの展開が長く続き、序盤、中盤と着実に長谷川がポイントをリード、長谷川は右目の下を内出血で青く腫らし、ブルゴスも右目の下を大きく腫らせて右目の目が見えないほど、長谷川は飛び込んで連打、ブルコスはそれをむかえうって連打、終盤にはブルゴスがよろめきシーンも増えだす、しかし遠い距離からのアッパーにはなおも威力を秘めている、WBCのルールで4ラウンド、8ラウンドの終了後に採点の途中経過が公開される、いずれも長谷川がリード、この後のラウンド、ブルゴスは試合の流れを取り戻そうと強引に攻撃を仕掛けてくる、長谷川はフットワークを使って身体に位置を変えて、そこから飛び込んで連打したり、ブルゴスの連打に合間に、スピードのある連打で試合の主導権を渡さずに、最終ラウンドのゴングを聞く、3人のレフリーとも文句のない点差で長谷川の勝利を支持、2階級上げての2階級制覇となる。 試合後本人も今日のようなボクシングではこのクラスでは通用しないとコメント、彼独特の謙遜もあるが、バンタム級の頃にはスピードのある強打が、デイフェンスにもなっていた、ところがブルゴスはそういうパンチを受けても、踏ん張ってパンチを返していた、パンチ力のパワーアップを図るトレーニング、パッキャオのように構えたその位置からノーモーションでパンチを出して、相手がパンチに反応する前にパンチを当てる、それとこの日の試合でも、ノーファールカップがあわずに、足の付け根に食い込むのか、ラウンドの途中に両方のグローブを両足の付け根のところをしきりに押さえていた、これを見たブルゴスはそこへパンチを繰り出す事もあった、これが長谷川の癖なら直さなければならない、フットワークか拳でのガードを固くする、フェザー級で肉を切らして骨を、の先方は選手生命と長くの防衛が困難になる、それで長谷川は、いつも見る者を楽しませてくれるボクシングをする選手。■「今日の言葉」■ 「 愛情を持って叱ることは 我が子と最良の交流となる 」 (自然社・平成22年・新生活標語より)