中島梓「転移」
高校生で「ぼくらの時代」に出逢ってから、ずっと中島梓さん、栗本薫さんのお話と一緒に生きてきました。(変な言い方ですが、そうだったのです)とは言っても、私は代表作とされる「グイン・サーガ」は全く読んでおらず「魔界水滸伝」シリーズやボーイズラブものももう一つ合わなかったので栗本薫ファンとしては亜流かなと思います。私の好きなのは伊集院大介もの、ぼくらシリーズ、六道ヶ辻シリーズ、そしてSF長編、短編です。彼女のSFを読んでから、「火星人ゴーホーム」「1984年」ブラッドベリなどに出逢いました。そして、中島梓名で書かれた評論、エッセイもだいすきでした。どんなに軽い始まりで書かれていても、そのエッセイは最後は現代社会の病巣や、問題点を鋭くえぐるものとなるのです。何度も線を引いて、ボロボロになるまで読みました。「息子に夢中」は、育児エッセイの氾濫にげんなりしていた私も未だに自分の育児のモットーとなる言葉が満載でした。そして、また、難病ものには絶対に手を出していなかった私ですがこれを読んで、大げさではなく私の出逢ってから31年の価値観形成に大きな役割を担ってくださった梓さん、薫くんとお別れなんだなあと 実感しました。癌が転移して、亡くなるまで最期まで本当に最期まで書き続けた梓さん。この本は「余命1ヶ月の・・・」(読んでないけど)などの難病ものを期待して読むと、少し物足りないかも知れません、淡々と、食べた物、身体の様子、思うことを記録しておられるからです。新聞の書評にも「決して悲愴な闘病記ではなく、作者の『こんな面白い体験を書かずには居られない』という作家としての性のようなものを感じる」と書かれていました。梓さん、長い間、ありがとう。あなたの本にどれだけ私は勇気づけられたか分からない。最期まで、こんな本を遺してくれてありがとう。できれば、最期の伊集院大介、読みたかったです。(「転移」の中には何度か執筆している様子は出てきましたが、完成したという記述はなかった・・)